Contents
ヒトツバタゴの基本情報
科名:モクセイ科 Oleaceae
————————
属名:ヒトツバタゴ属 Chionanthus
————————
学名:Chionanthus retusus
————————
和名:ヒトツバタゴ(一ッ葉田子)
————————
別名:ナンジャモンジャの木
————————
原産:日本・朝鮮半島・台湾・中国
————————
開花時期:5月
————————
高さ:~30m
————————
耐暑性:強い
————————
耐寒性:強い
————————
ヒトツバタゴの特徴
ヒトツバタゴは5月あたり(早い地域では4月中下旬から)に白い小さな花を枝先に咲かせます。開花量が多いと樹一面に白い花を咲かせ、秋には葉が黄色く色づいて黄葉も楽しめる落葉高木です。
開花時の姿は同じモクセイ科に属しているトネリコ(別名タゴ)に似ており、複葉のトネリコに対して単葉であることからで「一ッ葉」の「タゴ」が名前の由来になっています。
日本から朝鮮半島南部、台湾、中国などに自生しており、日本での天然の自生地は長崎県対馬市、岐阜・長野県境、愛知県木曽川流域などに限られ、各県のレッドデータブック掲載されたり、ヒトツバタゴ自生地として天然記念物の登録があります。
ヒトツバタゴは落葉性の高木で樹高が30mに達することがあります。近縁種にアメリカヒトツバタゴ(Chionanthus virginicus)があり樹高が10~12mとヒトツバタゴよりやや低めで、花に香りもありますが、北米東部に自生しており暑さが苦手なため植栽地域が限られます。
雌雄異株ですが、雄株・雌株での異株ではなく「雄花だけ咲かせる株」と「両性花を咲かせる株」があり、一株で実をつける個体もあります。
「ナンジャモンジャの木(樹)」
ヒトツバタゴは「ナンジャモンジャの木(樹)」と呼ばれる代表的な樹木です。
ナンジャモンジャは各地域において何という物か判別がつかないものについて名付けられていることが多く、ナンジャモンジャという名は木から草まであります。
「ナンジャモンジャの木」と呼ばれるものは、ヒトツバタゴ以外にもクス、ニレ、ボダイジュなどがあります。
ヒトツバタゴの管理と置き場所
ヒトツバタゴは陽当たり、風通し、排水性の良い環境で育てます。ただし砂質などのような極度に乾く土質では生育が悪化するため適度な保水性も必要です。
日本に自生しているため、ある程度土質さえ整えておけば生育上の難点はありませんが、樹高があることを想定して植える場所選びが必要になります。
樹高や樹幅は剪定である程度は制御できますが、元々の樹高が高く幹も太くなるため根も張ります。そのため植栽する場合は、家屋壁面や擁壁などから離れた場所に植えます。
ヒトツバタゴの年間管理表
ヒトツバタゴの植え替え
植え替えは12月~3月上旬で、主に落葉期間(落葉後から翌春の葉芽が生育始めるまで)に行います。3月末の植え替えもできますが開花間近に根を傷めると開花に影響がでることがあるので根鉢を崩すような植え替えは避けて下さい。また積雪や土が凍る時期(あるいは凍る直前の時期)を避けて植えた方が良いです。
庭植えの場合
株の根回りの大きさにより掘る深さや大きさが変わります。およその目安で、根回りの大きさの2~3倍の広さに穴を掘り、掘り返した土に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けます。
鉢植えの場合
成長にともない株に対して鉢が小さくなるようであれば、適宜植え替えを行い鉢のサイズを大きくします。苗が大きくなり、鉢のサイズを大きくすることができなくなったら、庭植えます。
ヒトツバタゴの用土の選び方
庭や花壇に植える場合は、完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。
鉢植えの場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3を混合した土に植え替えてください。市販の花や野菜用の培養土で育たないわけではないですが、植え付け初期は土の過湿ぎみになるため根腐れを起こすことがありますので避けた方が良いです。
ヒトツバタゴの水やり
ヒトツバタゴの水やりは一般的な樹木の水の与え方に準じます。
庭植えの場合
概ね天候に任せた水やりとなりますが、植えた時期から一年間は土の状態を見つつ水を与えます。特に植え替えた直後にたっぷり水を与え、一年目の夏だけは雨が降らない日が続くようであれば夕方にたっぷりと水を与えて下さい。9月末から10月以降で気温が下がり始めたら、おおむね雨まかせでも大丈夫です。
鉢植えの場合
年間を通して鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。
ヒトツバタゴの肥料の与え方
植えるときに完熟有機肥料と完熟堆肥を元肥として根回りに混ぜ込みます。
もし完熟まで至っていない(発酵や未発酵の)有機肥料や堆肥の場合は、根や根鉢に直接当たらないように混ぜます。
植えて数年経った株やある程度育った樹の場合は、12月~1月の間に寒肥を施します。樹の周囲(樹冠の真下あたり)の土を掘り返し、完熟堆肥や完熟肥料を混ぜ込みます。この際に土と一緒に根も切ることで、新根の発生も促すようにします。
ヒトツバタゴの剪定/刈り込み
基本的に自然樹形で育てることが多いですが、樹高を抑えたい場合は剪定を行います。
剪定時期は冬期または花後に行います。
冬期の剪定
落葉しているため枝全体を確認しやすく剪定しやすいという特徴があります。特に太い枝を切る場合は切り口が大きくなるため木のダメージを抑えるために冬期に行います。
ただし幹のように太くなった枝は不用意に切り落とすと不自然な樹形になることも多いので、なるべく毎年剪定を行い太くなる前に剪定する方が良いです。
また冬期の剪定の注意点として、ヒトツバタゴの花芽は前年伸びた新枝につきますが、冬期には新枝も木質化しているため見分けがつきにくくなります。
樹全体を刈り込むと開花できなくなることがあるので、枝先が残るような剪定を心掛け、樹に前年の新枝が残るような剪定を行います。
その他の剪定方法として、他の樹木と同じく各枝によく陽が当たるように、枯れ枝、同じ向きに伸びている枝(並行枝)、交差している枝(交差枝)、垂れ下がるように伸びている枝(下向き枝)などを切り取ります。
その後、樹木内側への風通りが良くなるように、樹木の内側から伸びている枝、幹側へ向かって伸びる枝(逆さ枝)、幹から出る勢いの弱い枝などを切り取ります。
花後の剪定
新枝が分かりやすいため新枝を残しつつ一般の樹木と同様に上記のような枝を剪定を行います。生育期のため切り口が大きくなるような太い枝の剪定は避けます。
ヒトツバタゴの増やし方
ヒトツバタゴの仲間は種まき、挿し木で増やします。
種まき
開花後に1㎝前後の実をつけ、秋には黒く熟します。実から種を取り出し、種の周りの果肉を洗い落とします。取り出した種は、すぐに種まきするか、乾かないように湿らせた土中で保管し翌年の3月に種まきします。
山野の木なので、土質さえ合っていればばら撒きでも芽は出ますが、雑草との違いが分からなくなるため、市販の種まき用土か花用の土に撒くことをお勧めします。
種まきの土や花用の土をポットに入れて、1~3粒ずつ種を撒き、軽く覆土します。たっぷりと水を与えた後、発芽するまで明るい日陰に置きます。
複数の種を撒いた場合は、発芽後に苗の生育にあわせて間引きしていきます。この間引きの際は土から引き抜くのではなく、ハサミなどで切ります。
本葉が3~4枚くらいの苗に育ったらポットに植え替えます。ポットで苗を大きく育てた後に定植する際は根が回る前に植え替えします。
挿し木
時期は6月~7月上旬あたりに行います。その年に伸びた枝(新梢)から挿し穂を作ります。新梢のうち、未熟な先端部分の枝と木質化しかけた根元部分を除いた部分の枝を使います。
葉が3対毎に枝をカットし、良く切れるカッターやナイフで下側切り口を給水しやすいように斜めに切ります。その後挿し穂を数時間水につけて給水させます。
挿し穂の一番下の葉を取り除き、残った2対の葉は、蒸散を抑えるため半分に切ります。
鹿沼土細粒か赤玉土細粒のような清潔な土を準備し、水をかけて湿らせた後、挿し穂を土に挿します。発根剤などを使うと成功率が上がるのでお勧めです。
ビニールなどで覆い保湿しつつ、日陰で水を与えながら管理します。
ヒトツバタゴの病害虫
悩まされるほどの病害虫はありませんが、日陰や風通しが悪い環境などで発生しやすくなる場合があります。環境改善を行うだけで病害虫被害は抑えることができます。