キショウブ(黄菖蒲)の育て方

キショウブ(黄菖蒲)の基本情報

科名:アヤメ科 Iridaceae
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属名:アヤメ属(イリス属)
   Iris
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学名:Iris pseudacorus
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異名(synonym):
   Iris acoriformis
   Xyridion pseudacorus (他多数)
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和名:キショウブ(黄菖蒲)
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英名:Yellow flag
   Yellow iris
   Water flag
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原産:ヨーロッパ・西アジア・アフリカ北西部
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開花時期:5月中旬~6月中旬
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高さ:50㎝~1m
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耐暑性:強い
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耐寒性:強い
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キショウブ(黄菖蒲)の特徴

キショウブ(黄菖蒲)はヨーロッパなどの水辺近くの湿り気の多い土地に自生する多年草で、日本に自生するノハナショウブ(野花菖蒲)の近縁種にあたる花です。

開花は5月~6月中旬(暖かい地域であれば4月末から)の梅雨から初夏に咲き、ノハナショウブやハナショウブと開花期はほぼ同じですが、若干早めに咲き始めます。

大正時代に観賞用に日本へ入っており、もともと黄色の花色がなかったハナショウブとの交配からキハナショウブ(黄花菖蒲)という栽培品種群が生み出され、ハナショウブの魅力を広げた原種の一つです。

一方でキショウブは自然環境に逸出した個体が分布範囲を広げていることが問題視されています。

管理が楽な園芸植物の常としてキショウブも環境省の定める「生態系被害防止外来種(旧要注意外来生物)」のリスト掲載植物です。

特定外来生物のように申請は必要ないですが、キショウブを長く楽しむためにも、あくまで自宅で楽しむにとどめ周辺地域や自然環境への種・株の植栽や逸出する環境での栽培(自宅の池だが周辺河川から水をひいている等)は避けた方が良いです。

キショウブとキハナショウブの違い

「キショウブ(黄菖蒲)」と「キハナショウブ(黄花菖蒲)」という良く似た名前の植物があり混同してしまいそうですが、この二つはそれぞれ別のものを指しています。

「キショウブ」はヨーロッパ原産の自生種イリス・シューダコルス(Iris pseudacorus)の標準和名で、イリス属の原種の一つです。

「キハナショウブ」はキショウブを交配親として生み出されたハナショウブ群のグループ名です。

キハナショウブは代表的な品種で第一号でもある「愛知の輝き」を始め、現在では多くのキハナショウブがあり、花色も黄色以外のバリエーションが増えています。

なおキショウブの英名は「Yellow flag(黄色のショウブ/菖蒲)」で、種小名「pseudacorus」は「偽のショウブ」を意味しており、日本でのハナショウブ(花菖蒲)と同じくショウブ科のショウブ(菖蒲)にちなんだ名前になっています。

キショウブ(黄菖蒲)の管理と置き場所

キショウブはハナショウブと似た環境を好み、水辺近くの陽当たりの良い湿った陸地で生育しています。

また湿った場所であれば林床の際の陽当たりの良い場所などでも自生しているようです。

ハナショウブの観賞期間に庭園や鉢物のハナショウブが水没か腰水で展示されていますが、このような展示は開花中の水枯れによる花傷みを防ぐために行っています。

キショウブも開花中だけ腰水管理できますが、年中水没させると根腐れします。

育てる際は陽当たり・風通し良い環境で、土は開花期を除き適度に湿度が維持できるような一般の花と近い育て方になります。

鉢植え

年間通して陽当たりの良い場所に置いて育てます。

耐暑性は高いですが、鉢や根が温められる状態は嫌うため、夏場はコンクリートの上に直に置くなどは避け、木製の簀子やポットフィーターなどで地面と直に触れないようにします。

後ほど水やりの項目でも説明しますが、蕾が上がる頃から開花中は水枯れを嫌うため、開花前後は鉢を高さの1/3くらいまで水に漬け腰水の状態で管理した方が良いです。

地植え

一般の花よりはやや湿り気の多く、腐植質に富んだ土地で、陽当たりの良い場所であれば、池などの水辺がなくても庭に植えることができます。

自宅の池周辺に植えることもできますが、周辺河川から水をひいている場合は種の逸出が考えられるので避けます。

開花期のみ水が多く必要になりますが生育するだけならば排水の良い環境でも十分育ちます。

梅雨の降雨が少ない場合や梅雨より前に開花する地域では、開花期間のみ頻繁に水を与えることで問題なく開花させることができます。

キショウブ(黄菖蒲)の年間管理表
 
キショウブ(黄菖蒲)の植え替え

キショウブの植え替え時期は基本的に開花直後(6月~7月)が良いですが、ポットの苗や鉢植えの株を大きな鉢に植え替える場合は秋(9月末~10月上旬)に植え替えることもできます。

キショウブはハナショウブと同じく根茎が地表下~地表際を伸びていき根茎から地中に根を伸ばします。

根茎には伸びてきた側と伸びていく側があり、新芽がある側が伸びていく方向になるので、植え替える際に気にかけて植え替えます。

裸の根茎を植える場合

根茎のみの状態で入手した場合や株分けや土替えなどの土を崩す植え替えが該当し、土を崩すような植え替えは開花直後に行います。

キショウブを始めハナショウブの仲間は植えたままの状態では連作障害が起き生育が悪くなります。

鉢植えの場合は毎年植え替えるようにし、地植えの場合でも数年経った株は別の場所に植え替えた方が良い場合があります。

植え替えは、鉢から根鉢を取り出すか地面から株を掘りあげ土を崩し、根茎と根だけの状態にします。

根を切って整理し、葉も半分から1/3まで切り取って株の準備をします。

鉢の場合は新しい鉢と新しい用土を準備し、根を土中に入れつつ根茎は地表か地表直下になるように植え替えます。

葉がある側に新しい根茎が伸びていくので、葉がある側が広くなるように植え替えます。

地植えの場合は腐葉土や完熟堆肥を土に混ぜこんでから、鉢植えと同じく根茎が地表か地表直下になるように植え替えます。

鉢をサイズアップさせる場合

秋以降に苗で入手した株や小苗などは土を崩さずに鉢をサイズアップします。この場合は土を崩さないため開花後以外にも秋(9月末~10月上旬)も植え替えができます。

根鉢を崩さず植え替えるため、根鉢の土と近い土質のもので植え替えた方が良いです。根鉢の土と新しい土との間の通水性の差から根鉢内に水が染み込まないことがあります。

キショウブ(黄菖蒲)の用土の選び方
鉢植え

市販の草花用の培養土で植え替えできます。混合する場合は、赤玉土小粒:腐葉土=7:3の用土で植え替えます。

なお市販の草花用の培養土で植え替える場合は、駄温鉢などの重めの鉢を使うと良いです。プラ鉢で植え替えた場合は用土も軽いため、腰水の際に安定せずに倒れやすくなります。

また植え替え時の元肥は加えず、新芽が出る頃から追肥としてあたえます。

地植え

腐植質に富んだ土質に変えるため完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

キショウブ(黄菖蒲)の水やり
鉢植え

開花期を除き他の花と同じように鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと水を与えます。

一方で蕾が上がる頃から開花中にかけては頻繁に水を与えるか、水に半分~1/3漬けて腰水状態で管理することで水枯れさせないようにします。

地植え

開花期以外は基本的に水やりをする必要はありません。

一方で比較的湿度が保てない土質の場合や開花期が梅雨時期からずれているような地域、梅雨でも降雨少ない場合は蕾が上がる頃から開花が終わるまで定期的に水やりを行います。

キショウブ(黄菖蒲)の肥料の与え方

キショウブの肥料やりは、花が豪華なハナショウブほど必須ではないですが、ハナショウブと同じく春の芽だし、開花後、秋の株の肥大の3回与えると良いです。

特に秋の追肥は株の充実と翌年の開花に影響を与えるため重要です。

鉢植え

鉢植えは基本的に毎年植え替えますが、植え替え時には元肥は施しません。

また毎年植え替えることになるので、開花後のお礼肥は植え替え後の新芽が出始めたあたりから、固形の有機肥料を鉢の縁や根茎から離れた場所に施します。

秋(9月~10月)にかけて固形の有機肥料を鉢の縁などにあたえ、春の芽吹きの頃にも同様に固形の有機肥料を与えます。

地植え

定植時に元肥は加えませんが、腐植質に富んだ土質に改良するための堆肥類を混ぜ込んでから植え付けます。

その後の株を移植するまでの数年間は、開花後のお礼肥、秋(9月~10月)頃、春の芽吹く頃に固形の有機肥料を根茎から少し離した場所に与えます。

キショウブ(黄菖蒲)の増やし方

キショウブは「株分け」「種まき」で増やします。

株分け

株分け時期は植え替えと同じく開花後に行います。

親株の土を落とし、葉と根茎をセットで切り取り株分けします。

根茎から出ている根を切って整理し、葉も蒸散を抑えるために半分から1/3に切り取ります。

鉢植えの場合は根茎の切り口を鉢の縁に寄せ、葉の側に広くとって新しい根茎や新芽が伸びていけるようにします。

種まき

開花後にできる種を秋ごろに取り撒きするか、保管して春まきします。

種まきに使う用土は、種まき用土などの専用の土を使う必要はなく、植え替えに使う用土などに種まきできます。

キショウブ(黄菖蒲)の病害虫

害虫として「ヨトウムシ」「アヤメキバガ」などが発生することがあります。

害虫

「ヨトウムシ」
ヨトウガの幼虫で日中は半地中や草陰などで休み、夕方以降から活動を始め葉や新芽を食害します。

日中は見つけにくいためヨトウムシを捕殺するためには夜間に調べます。

「アヤメキバガ」
アヤメの仲間に発生する蛾の一種で、葉の芯や花芽を食害します。

捕殺もできますが、食害が酷くなってからでないと気付きにくいため、捕殺する場合は定期的な観察が必要になります。

退治・治療方法

「ヨトウムシ」「アヤメキバガ」ともに見つけにくく、捕殺も楽ではないので、浸透移行機能のある薬剤やスプレー剤で「花き類」の登録と「ヨトウムシ」の記載(または「アオムシ」などの鱗翅目害虫の記載)がある薬剤を使うと退治できます。

また予め浸透移行系の殺虫粒剤を株回りに撒き、被害を抑えることができます。

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