ハス(蓮)の育て方

ハス(蓮)の基本情報

科名:ハス科 Nelumbonaceae
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属名:ハス属(ネルンボ属)
   Nelumbo
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学名:Nelumbo nucifera
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和名:ハス(蓮)
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別名:ハチス(蜂巣)
   スイフヨウ(水芙蓉)
   イケミグサ(池見草)
   ハナハス(花蓮)
   ショクヨウハス(食用蓮)など
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英名:Lotus
   Indian lotus
   Sacred lotus
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原産:インド北部~中部
   熱帯アジア~温帯アジア
   オーストラリア北部~東部
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開花時期:7月~8月
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高さ:50㎝~1m
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耐暑性:強い
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耐寒性:強い
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ハス(蓮)の特徴

ハス(蓮)はハス科ハス属の水生植物で、熱帯~温帯アジア原産のハス(蓮=Nelumbo nucifera)とアメリカ原産で黄色の花を咲かせるキバナハス(黄花蓮=Nelumbo lutea)の2種のみあります。

一般的にハスと呼ぶ場合はハス・キバナハス、それぞれの園芸品種から交配種までを指します。

大バスと呼ばれる大輪花の品種から、茶碗バスと呼ばれる小型品種まであり、一年を通して水があり良く陽の当たる池などで観賞されるだけでなく、貯水できる大き目の鉢や桶のような容器で栽培できます。

花が開くのは午前中のみで7月~8月に開花し、花色は色~濃ピンクやキバナハスとの交配種で黄色系の花色もあります。

ハス(蓮)と蓮根

ハス(蓮)は、用途によって根茎をレンコン(蓮根)として食用にする食用ハスと観賞用の花ハスと呼び分けることがあります。

食用ハスは根茎が肥大するので蓮根として食用にされ、大蓮と呼ばれる大輪花が咲くものの株が大きくなります。

花ハスは蓮根部が肥大しないため基本的に観賞用ですが、大蓮タイプの花ハスの中には花ハス・食用ハス兼用の品種もあります。

ハスは蓮根以外も食用にすることあり、特に自生地域では若芽や種を食用にしたり、花を花茶、葉を葉包みとして利用することもあるようです。

ハス(蓮)の名前の由来

ハス(蓮)は開花後に10~20個前後の種を抱えた蜂の巣状の花托ができるため、ハチス(蜂巣)が訛って「ハス(蓮)」となったと言われています。

英名では「Lotus」で、ハス(蓮=Nelumbo nucifera)は「Indian lotus」「Sacred lotus」、キバナハス(黄花蓮=Nelumbo lutea)は「American lotus」「Yellow lotus」などと呼び分けることもあります。

属名の「Nelumbo」はハス類を指すシンハラ語(スリランカの公用語の一つ)が由来です。

なお英名では「Lotus」ですが、属名で「Lotus」はミヤコグサなどを含むマメ科の植物の属名で、ハスとは関係ない植物です。

ハス(蓮)の種類と古代ハス

ハス科はハス属のみの存在し、以前はハス科はスイレン目に分類されることもありますが、APG分類体系ではAPGⅣからヤマモガシ目(バンクシアやプロテアなどのヤマモガシ科などが含まれる)に分類されます。

白亜紀や新生代にかけて化石種がありますが、現存するハス(蓮)の仲間は、ハス科ハス属にハスとキバナハスの2種のみです。

ハスの種は果皮が厚く、発芽能力が長期的に保たれることから、古い地層から発掘したハスの種が発芽することがあり「古代ハス」と呼ばれます。

「古代ハス」と呼ばれるハスは、2000年前と推定される「大賀ハス」や1400~3000年前と推定される「行田ハス」などがあります。

ハス(蓮)の年間管理表
 

ハス(蓮)の管理と置き場所

ハス(蓮)は池や貯水できる大き目の容器などを使い、雨の当たる直射光が当たる陽当たりと風通りの良い環境で育てます。

自生環境は水面に陽が当たる開けた池に生え、夏期に干上がりやすい水際周辺や水深が深すぎる池の中央を除く水深10㎝~30㎝あたりの泥濘地に生育します。

池・鉢ともに年間通して水を溜めて管理し、春から秋までの葉がある期間は十分な水量を与え、冬は水位が下がって蓮根部が凍らないくらいの水量を保ちます。

ただし水深の深いところでは育たないため、水深が50㎝を超えないように注意します。

池栽培

池の周囲に障害物が少なく水面に直射光が良く当たるような場所に直植えするか、池の水深が深い池の場合は大きな鉢に植えて沈めます。

大きすぎる池・湧水が流れ込む池・川などの流水環境の場合は、水温が上がらないため生育・開花できなくなったり、池底や鉢内の泥が流されるため避けます。

鉢に植えて沈める場合は、次項の鉢栽培と同じように植えたものを沈めます。

鉢栽培

水が溜まる穴のない鉢や樽などに泥状にした用土を入れて育てます。

大バスであれば少なくとも直径50㎝・深さ50㎝以上の鉢に半分程度は用土を入れて育てます。

茶碗バスは小型のハス類で、店頭では洗面器のような容器で開花株が並ぶことがあり育てることもできますが、ある程度容量がある直径20~50㎝・深さ20~50㎝くらいの鉢の方が管理上育てやすいです。

鉢栽培も池と同じく直射日光の当たる場所に鉢を置き、定期的に水を足します。

また鉢栽培ではメダカなどの小魚を入れてボウフラ対策を行うと良いです。

ハス(蓮)の生育サイクル
早春~春
塊根先端にある芽から泥中に茎が伸び始め、茎の節ごとに葉と根を出しながら伸び進みます。
葉の出始めの頃から株が充実するまでは浮葉という水面に浮かぶような状態で展開します。
初夏~夏

水温が上昇し、浮葉が増えて株が充実すると立葉(水上葉)という水上に立ち上がった状態の葉で始めます。

初夏に向けて立葉が増えていき、7月~8月にかけて開花します。
ただし育つ過程で株の状態が悪化した場合は立葉が枯れて浮葉に戻ることがあり、この場合は開花できなくなります。
秋~初冬

花後の花托に種が育ちます。秋になって気温が下がる頃から泥中の茎に新しい塊根(蓮根)が作られ肥大します。

初冬~冬

寒さで肥大した塊根(蓮根部)を残して葉や茎などが枯れて、休眠します。

 
 
ハス(蓮)の鉢選び

植え替えに使う鉢は、穴がなく貯水できる鉢で、用土量と水深を確保するためにある程度深めの鉢を使います。目安としては直径と深さが同比率くらいのものが良いです。

また鉢の縁取りが内側に入り込んでいないもの(火鉢型でないもの)を使います。

これは泥中を成長するハスの茎が鉢内では内縁を周回し、立葉が真っすぐ成長できなくなるためです。

なお睡蓮鉢を使うこともできますが、睡蓮鉢は多くがスイレンの株元に光が当たる浅いものが多いため、上記の条件を満たすなるべく深めのものを選びます。

ハス(蓮)の植え替え

ハス(蓮)の植え替えは厳寒期を除く冬から生育を始める3月までに行います。

前年からの株は、泥内に蓮根が複数できているので、一度取り出して先端の芽と3~4節分の塊根がある状態に切り分けたものを一鉢に1~2株だけ残して植え直します。

なお蓮根間の節(連結部)から葉や根がでるため、折ったり傷つけないようにします。

池に植え付ける場合は水深が20㎝前後で夏場に干上がらない場所に根塊全体が泥内に埋まるように植え付けます。

鉢に植え付ける場合は、新しく伸びていく地下茎が鉢縁に衝突しないように根茎を鉢の縁側に植え付けます。池に植え付ける際と同じく根塊全体が泥内に埋まるように植え付けます。

ハス(蓮)の用土の選び方

ハス(蓮)を鉢栽培する場合は、市販されている荒木田土などの田土のようなもの使います。

また赤玉土小粒:腐葉土=8:2くらいの用土で育てることもできますが、大バス類を大きな鉢で育てている場合は強風で株が用土から持ち上がることがあるため、茶碗バスなどの小型ハスの植え替えに使った方が良いです。

荒木田土が入手できない場合は、赤玉土:黒土(またはケト土)=8:2を砕いて練ったものを使うこともできます。

また生育にミネラルが必要なので、植え替えの度に用土に苦土石灰を少量混ぜ、元肥として緩効性化成肥料も加えます。

ハス(蓮)の水やり

鉢栽培のハス(蓮)は滞水状態で育てるため、水が減ったら追加するように水を与えます。

定期的に水質が悪くならないように水替えを行いますが、水替えの際は水道から直に使うと水温が低すぎるため、一度溜めておいた水を使った方が良いです。

早春~春にかけては一度水量を減らして水温が上がりやすくした方が良く、浮葉が増えたら徐々に水量を増やします。

冬場は生育が止まっているため水量は減らしても良いですが、蓮根が凍結しないようにある程度の水量を維持します。

ハス(蓮)の肥料の与え方

植え替えの際に用土に緩効性化成肥料を混ぜ込んでから植え付けます。

追肥は葉が始める4月から蓮根が発達する9月まで月に一回の頻度で緩効性の化成肥料またはスイレン用の肥料などを泥中に与えます。

なお水中に肥料を与えると水質が劇的に悪化したり、藻が大発生することがあるので、泥内に埋まるように与えます。

ハス(蓮)の手入れ
枯葉取り

枯れた葉や散った花弁が水中にとどまると水質が悪化しやすいので適宜取り除きます。

ボウフラ対策

滞水状態で管理するためボウフラが発生しやすくなるので、メダカなどを入れてボウフラ対策をします。

なお小動物を食べる魚であればメダカ以外でも大丈夫ですが、水温が高くなりやすいので水温上昇にある程度耐性がある魚が良いです。

ハス(蓮)の増やし方

ハス(蓮)は株分け・種まきで増やします。

株分け

植え替えと同じく厳寒期を除く冬から生育を始める3月までに行います。

秋になると地下茎の先端が徐々に肥大して複数の蓮根ができます。株分する場合は、先端の芽と3~4節分の塊根がある状態に切り分けたもの1セットとして株を分けます。

蓮根間の節(連結部)から葉や根がでるため、折ったり傷つけないようにします。

植え替え同様に1鉢に1~2株ずつ植え直します。

種撒き

時期は4月~5月あたりに行います。ハスの種は果皮が厚いため、果皮をヤスリなどで傷を入れて果肉が少し露出した状態にして水に漬けます。

水を定期的に交換し、種が発芽したら親株と同じく用土と水を入れた鉢を準備し、用土表面に軽く埋め込みます。

ハス(蓮)の病害虫
害虫

「アブラムシ」「ハダニ」が発生することがあります。

「アブラムシ」は新芽や花に発生することがあります。風通しの悪い環境で発生しやすくなりますが、基本的に病害虫に強いため、環境を整えた上で消毒を行えば以降の発生は抑えることができます。

「ハダニ」は夏期の雨の少なく乾燥した状態で発生しやすくなります。雨ざらし状態ではあまり発生しませんが、雨のない期間が続くと発生することがあります。

主に葉裏に発生し、被害が酷くなると葉裏からの吸汁のためカスリ状に葉色が悪くなり、蜘蛛の巣のような糸が葉や枝を覆います。

発生初期は葉裏から勢いよく水を吹きかけて抑えることができます。蜘蛛の巣状に糸が覆っている場合は、葉裏から水を吹きかけた後、消毒をします。

病気

「腐敗病」が発生することがあります。

「腐敗病」は葉が黄変しながら枯れる病気で、土質や水質の悪化が発生します。特に夏場の高温で水質・土質悪化などで起きやすくなります。

定期的な水替えで水質悪化を防ぎ、コンクリートなどの地面に直置きで土が異常高温にならないようにします。

また夏場に水が乾いて根が傷んでも同様の症状が発生するため、夏場の干上がりも注意します。

「アブラムシ」「ハダニ」が発生した場合では、市販のスプレータイプの薬剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

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