アルストロメリアの育て方

 アルストロメリアの基本情報

科名:ユリズイセン科(アルストロメリア科)Alstroemeriaceae
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属名:ユリズイセン属(アルストロメリア属) Alstroemeria
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学名:Alstroemeria
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和名:ユリズイセン(百合水仙)
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別名:インカノユリ(インカの百合)
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英名:Peruvian lily, Lily of the Incas
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原産:南アメリカ
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開花時期:5月~7月
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高さ:30㎝~2m
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耐暑性:やや弱い
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耐寒性:やや弱い
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 アルストロメリアの特徴

アルストロメリアは南米原産の多年草で、花弁に独特な縞模様や斑点模様が入り、それらの縞模様も相まって花色は単色よりは複色のものも多くエキゾチックな雰囲気があります。

草丈は30㎝から2mを越す品種もあり、花壇の植栽から切花としても人気の高い花です。

根は、白く細い芋のような根茎が束になっており球根植物として扱われることもあります。

南米に100種くらいの原種が自生しており、多くはチリ中央部とブラジル東部に自生しています。チリ由来は冬に成長し、ブラジル由来は夏に成長するなどの特徴もありますが、それぞれの地域では乾燥地から湿地、低地から高地など自生環境は様々です。

種間交雑も進み、多くの雑種と少なくとも200種以上の栽培品種があります。冬型のチリ種と夏型のブラジル種の交配から常緑性の品種や四季咲きの品種などが生み出され、切花を年中生産することができるようになっています。

1980年代にアメリカで品種改良が始められ、現在はオランダやイギリスで多くの品種が生み出されており、品種が増えた結果、花色のバリエーションだけでなく、常緑性・落葉性・中間タイプの品種、基本的には春~夏の一季咲きですが上記の通り四季咲き性の品種などもあります。

 アルストロメリアの名前の由来

「アルストロメリア」という花の名前は属名のそのままに「Alstroemeria」が由来です。

Alstroemeria という名は、当サイト名の「リンネの庭」のもとである植物学者にして分類学の父カール・フォン・リンネ(Carl von Linné:1707~1778)が自ら採集し命名しています。リンネは友人であるスウェーデンの実業家で博物学者のクラース・フォン・アルストレーマー(Clas von Alströmer:1736~1794)にちなんで名付けたようです。

別名の「インカノユリ(インカの百合)」やその元の英名の「Lily of the Incas」は、南アメリカのチリなどに自生地があることからインカ帝国と関連付けて名付けられているようです。

 アルストロメリアの不思議

アルストロメリアの葉は元の部分から捩じれて葉の裏側が太陽の方へ向いています。何をもって表と裏なのかという哲学的な問題になりそうですが、他の植物で裏側になる面が表側に変わっているため、葉裏にある葉脈の凸凹などの構造ごとひっくり返っています。

日本にもウラハグサ(裏葉草)またはフウチソウ(風知草)という植物がありアルストロメリアと同じく葉の表と裏がひっくり返っています。

ウラハグサなどのイネ科にいくつか葉の向きが変わる植物がいますが、アルストロメリアも含め「なぜひっくり返るのか分かっていません」。

表裏が入れ替わった方が有利になる環境や入れ替えないと不利になる環境などがありそうなものですが、現在のところ理由については不明です。あまり釈然としないマメ知識ですが、アルストロメリアのちょっとした不思議です。

 アルストロメリア管理と置き場所

アルストロメリアは陽当たり・風通し・排水性の良い環境で育てます。また高温多湿と凍結を嫌うため、地域や自宅の環境によって鉢植えで場所を変えながら管理をした方が良い場合と環境を整えて地植えできる場合があります。

鉢植え:どの地域でも鉢植えであれば育てることができます。春と秋は直射日光があたる場所で育て、夏場は明るい日陰か朝日だけがあたるような場所に置きます。冬場は凍らない場所へ移動させます。

後ほど水やりの項目でも説明しますが、夏場と冬場は水やりを控えることで根腐れし難くなります。

地植え:暖地や温暖地などの地表近辺のみ凍るような地域であれば、冬場にウッドチップや腐葉土などでマルチングを行うことで越冬できます。一方で夏の高温と多雨で枯れやすいため、斜面や土を盛った場所など排水の良い場所に植えるか、土質を排水良く作り替えて植えた方が良いです。

また夏の高温でも枯れやすいため、アルストロメリアの周囲に草花を多く植えることで地温の上昇を抑え、夏の高温でも枯れにくくなります。

 アルストロメリア年間管理表
 アルストロメリア植え替え

植え替え時期は春(3月~4月上旬)と秋(9月中旬~10月上旬)に行います。

入手方法は球根として販売されている物、苗、開花株などがあり、球根は秋ごろ、苗は秋~春、開花株は春に店頭に並びます。

また育てている株については、2年~3年に1回の頻度で上記の時期に植え替えや株分けを行います。

アルストロメリアは球根植物として扱われることがありますが、チューリップのような丸い玉状の根塊はなく、白く多汁質のやや太めの根が先端で束になった作りになっています。新芽は束が纏まっている側から伸び始めます。

どのような植え方の場合でも新芽が伸びる部分は地中深くに埋まらないよう地表から2~3㎝くらいの深さに留めます。

裸の球根を植える場合:鉢または植える場所に穴を掘り、白い根の部分を広げるように置いてから土を被せます。土を被せる際は白い根が繋がっている部分が地表から2~3㎝くらいの深さにします。

苗・開花株:極度に根詰まりしている場合を除き、根鉢を崩さず一~二回り大きな鉢または花壇などに定植します。

育てている株の植え替え:鉢植えや地植えの株を掘り上げるなどの土を崩す植え替えは、休眠中かつ生育が始まる少し前が理想です。上記の通り春と秋に行いますが、具体的には春は寒さが落ち着き春の新芽が動く前で、秋は暑さが落ち着き秋の新芽が出る前です。

根鉢を取り出し太い根を切らないように土を崩し、新しい鉢へと植え替えます。植え替えの際は裸の球根を植える場合と同じく根を広げながら植え替えます。また植え替えの際は一気に土を足さず、根と根の間に土が入るようにします。

 アルストロメリア用土の選び方

鉢植えの場合:根が太く多湿では根腐れしやすいため、保水性・排水性に加え通気性もある用土に植え替えます。混合する場合は、赤玉土小粒:鹿沼土小粒:腐葉土を等量混合で用土を作ります。

また排水良く作られていることが多い観葉植物用の土で育つこともあります。一方市販の花や野菜用の土はアルストロメリアにとっては過湿になりやすいため避けた方が良いです。

庭植えの場合:排水性を良くするために完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

また粘土質の土壌は嫌うため、植える場所が粘土質の場合は堆肥類以外にもパーライト、軽石小粒、川砂などを混ぜ込み土質を作り変えます。

 アルストロメリア水やり

品種により生育の仕方に違いがあるため、アルストロメリアの生育を見ながら水やりを加減した方が良いです。

概ね新芽が良く出る生育期は土の乾きに応じてたっぷりと水を与え、生育が悪くなる夏や休眠する冬は水やりを控えます。

なお春咲きの品種であれば夏~冬に生育が悪くなるか休眠し、春と秋に開花する品種は夏と冬に休眠します。

鉢植え:新芽がでる春または春・秋の生育期は水枯れしないように鉢土の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

夏~冬または夏・冬は、葉がある状態ならば鉢土の表面が乾いて5~7日後くらいに水を与えるような乾かし気味の管理をします。葉がない場合は断水して休眠させます。

地植え:基本的に水やりをする必要はありません。

 アルストロメリア肥料の与え方

鉢植えの場合:植え付けの際に根を傷めないような緩効性の化成肥料を元肥として土に混ぜ込みます。

新芽が出始めるころから、月に1回の置き肥と1~2週間に1回の液体肥料を追肥として与えます。追肥は開花が終わるまで続けます。

一季咲きの品種では新芽は春から出始めるため追肥も春のみになり、四季咲き品種では初秋も新芽が出るため春・秋の2回追肥を与えます。

地植えの場合:土質を改良するための堆肥類とともに完熟の有機肥料か緩効性の化成肥料を混ぜ込んでから植え付けます。

地植えの場合は追肥はそれほど必要ではありませんが、開花量が多い品種や四季咲き品種の場合は、新芽の出始める春または春と秋に有機肥料か緩効性の化成肥料を株の周りに与えます。

 アルストロメリアの手入れ

支柱立て:原種や原種に近い品種では支柱は必要ないですが、栽培品種など開花量が多い品種では花茎が倒れることがあります。花茎が伸び始めたら品種に応じた長さの支柱で花茎を支えます。

花後の手入れ:開花が終わった花茎などが黄色に変色するか枯れ始めたら花茎を抜き取ります。多年草として寿命が長いため、ウイルス病を感染させないためハサミなどは使わずに手で抜き取ります。

抜き取り方は、片手で花茎周面の土を押さえ、もう一方の出て引き抜くと簡単に抜き取ることができます。

 アルストロメリア増やし方

アルストロメリアは株分けで増やします。

株分け時期は植え替えと同じく春(3月~4月上旬)と秋(9月中旬~10月上旬)に行います。

アルストロメリアの根は白くやや太めの根が先端で束になった作りになっています。束が纏まっている側に新芽があり、太い根の部分だけでは芽がでません。

株分けの際には芽と根がセットになるように分けます。

分けた株は植え付けで説明した裸の球根の植え方と同じく、新しい鉢または新しく植える場所に穴を掘り、白い根の部分を広げるように置いてから土を被せます。土を被せる際は芽の部分が地表から2~3㎝くらいの深さにします。

 アルストロメリア病害虫

害虫:「アブラムシ」などが発生することがあります。

「アブラムシ」は春先に新芽・蕾周辺・花裏・葉裏などに発生します。陽当たりや風通しが悪い場所やで発生量が増えることがあるので、育てている環境の改善も行うと良いです。

病気:「灰色かび病」が発生することがあります。

「灰色かび病」は終わった花柄や枯れた葉に発生します。主に梅雨時期など過湿期に発生しやすく、灰色~灰褐色のカビが伝播していくため、花柄や枯れ葉は早めに除去します。

「アブラムシ」「灰色かび病」が発生した場合では、市販のスプレータイプの薬剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

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