イセナデシコ(伊勢撫子)の育て方

イセナデシコ(伊勢撫子)/ナデシコ・ダイアンサスの仲間の基本情報

科名:ナデシコ科 Caryophyllaceae
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属名:ナデシコ属(ダイアンサス属)
   Dianthus
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学名:Dianthus x isensis
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和名:イセナデシコ(伊勢撫子)
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別名:ゴショナデシコ(御所撫子)
   オオサカナデシコ(大阪撫子)
   サツマナデシコ(薩摩撫子)
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原産:(園芸種)
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開花時期:5月~7月・9月~10月
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高さ:30㎝~70㎝
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耐暑性:やや強い
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耐寒性:強い
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イセナデシコ(伊勢撫子)の特徴

ナデシコの仲間(ダイアンサス属)はヨーロッパ・アジア・北アメリカ・南アフリカなどに約300種あり、日本にもカワラナデシコ(Dianthus superbus var. longicalycinus)やハマナデシコ(D. japonicus)などが自生しています。

「イセナデシコ(伊勢撫子)」は江戸時代にセキチク(石竹=D. chinensis)やトコナツ(常夏=D. chinensis var. semperflorens)、セキチクとカワラナデシコ(D. superbus var. longicalycinus)との交配から生み出されたといわれるナデシコの仲間で、花弁先が細く裂けて長く垂れ下がる花姿をしています。

江戸時代に作出され、伊勢では「伊勢花菖蒲」や「伊勢菊」とともに「伊勢三珍花」や「松阪三珍花」と呼ばれます。

また薩摩で作出され大阪から松坂(伊勢)へと伝わったことから「サツマナデシコ(薩摩撫子)」「オオサカナデシコ(大阪撫子)」などの別名もあり、京都や江戸でも広く栽培され「ゴショナデシコ(御所撫子)」という名もあります。

花弁は品種によって20㎝近くまで長くなるものもあり、古典園芸植物として楽しまれるほか、やや花弁は短いものの一般の園芸植物として店頭に並ぶことがあります。

「ナデシコ」や「ダイアンサス」の名で大量に流通する草丈がコンパクトな園芸種と比べると、花弁が長さもさることながら草丈もやや高めの品種が多く、品種によって30~70㎝くらいまで成長します。

また多年生なので、植え付けてから数年間は株が大きく育ちながら毎年花を楽しむことができます。

イセナデシコ(伊勢撫子)の管理と置き場所

イセナデシコ(伊勢撫子)は陽当たり・風通し・排水性の良い環境で育てます。

古典園芸植物として鉢栽培されることもありますが、品種をこだわらず環境も整っていれば鉢植え・地植えどちらでも簡単に栽培でき、真夏を除く春~秋に開花し、寒さも強いため多年草として育てることもできます。

一方で夏の高温多湿は苦手で、風通しが悪く蒸れる環境だと葉が黄化することがあります。

本来は多年草ですが、老化した経年株は花付きが悪くなり、また安価な花でもあるので、夏・冬の開花が止まる時期を境に一年草として扱うこともあります。

イセナデシコ(伊勢撫子)の年間管理表
 
イセナデシコ(伊勢撫子)の植え替え

苗を入手後になるべく早く地植えまたは一回り大きな鉢か複数株をまとめて大きな鉢に植え替えを行います。

多年草として育てている鉢植え株の植え替えは、早春(3月)または初秋(9月中~下旬)に行います。

イセナデシコを含むナデシコの仲間は細かな根が密に張るので、鉢栽培の株は基本的に毎年1回は植え替えます。

植え替えの際は根鉢表面の細かな根を解して軽く土を落として植え替えます。

地植え株の場合は植え替えの必要はありませんが、株が大きくなって植栽のバランスが崩れる場合は数年に1回掘り上げて株分けを行うと良いです。

イセナデシコ(伊勢撫子)の用土の選び方
地植え

苦土石灰を混入して中和し、1~2週間後に排水性を良くするために完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

また植え付け周囲を盛り土するか、レイズドベッドと呼ばれる土を一段盛り上げた花壇を作ると過湿になりにくく良く育ちます。

鉢植え

市販の花用の培養土でも育ちます。

夏越しのためには保水性・排水性に加え通気性もある用土が良いので、土質によっては市販の培養土に赤玉土小粒・軽石小粒をそれぞれ1割ずつ混ぜて植え替えます。

混合する場合は、赤玉土小粒:鹿沼土小粒:腐葉土を等量混合で用土を作ります。

イセナデシコ(伊勢撫子)の水やり
地植え

植え付けた後にたっぷりと水を与えた後は基本的に天候任せで水やりをする必要はありません。

ただし夏場で晴天が続くようであれば、表土の乾きを確認しつつ夕方にたっぷりと水を与えます。

鉢植え

春~晩秋までは表土が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

夏・冬も表土が乾いてから水を与えますが、生育が止まって吸水量が減っているため過湿になりやすいので水の与え過ぎに注意します。

鉢植えの場合は、梅雨時期の連続する降雨で根腐れしやすくなるため、南向きの明るい屋根下などに移動し土の多湿を避けた方が良いです。

イセナデシコ(伊勢撫子)の肥料の与え方
地植え

土質改良のための堆肥類とともに完熟の有機肥料または根を傷めにくい緩効性の化成肥料を混ぜてから植え付けます。

開花期間の5月~7月・9月~10月に追肥として月1回の頻度で緩効性の化成肥料を株元から離した株の周囲に与えるか、液体肥料を月に2回の頻度で薄めて与えます。

鉢植え

植え付ける際は、元肥として根を傷めにくい緩効性の化成肥料を土に混ぜて植え付けます。

開花期間の5月~7月・9月~10月に追肥として月1回の頻度で緩効性の化成肥料を株元から離した株の周囲に与えるか、液体肥料を月に2回の頻度で薄めて与えます。

イセナデシコ(伊勢撫子)の手入れ

イセナデシコ(伊勢撫子)の主な手入れは「花摘み」「切り戻し」などがあります。

花摘み

花が咲き終わると、花柄で見た目が悪くなるだけでなく、湿度の高い時期は灰色かび病の発生源になるため適宜取り除きます。

また種を付けさせないように花の付け根から摘み取ることで、次の花が咲きやすくなります。

切り戻し

花がある程度咲き終わったら、草丈の半分程度で切り戻しを行うことで新しい芽が出て花を咲かせます。

また梅雨~夏の高温多湿から蒸れて株を傷めないように、半分~1/3に刈り込みます。

ただし葉が株元に残らないような切り方をすると枝が枯れ混むことがあるので、株元に葉が少ない場合は切り戻す高さを調整して葉が残るようにします。

イセナデシコ(伊勢撫子)の増やし方

イセナデシコ(伊勢撫子)は株分け・挿し芽・種まきで増やします。

株分け

株分け時期は2月末~3月に行います。

鉢植えであれば根鉢を取り出し、地植えであれば掘り上げて、株の中心を境に、各株に根が付くように分割します。

挿し芽

イセナデシコ(伊勢撫子)の挿し芽の時期は4月~6月・9月~10月に行い、新芽あたりを使って挿し芽します。

新芽先端から3~5㎝を切り取り、挿し穂の下側1/3の葉を取ってから水に漬けて給水させます。なお親株に前日たっぷりと水を与えておくとより効果的です。

育苗トレーや鉢などに湿らせた挿し芽用の土やバーミキュライトなどの清潔な用土を入れ、挿し穂の1/3が埋まるように土に挿します。

なお挿し穂に発根促進剤を付けたり、活力剤を水に加えることで発根率が上がります。

種まき

イセナデシコ(伊勢撫子)は前年採種したものなどを使って種まきしますが、親株と同じ花にはならないため注意が必要です。

撒き時期:暖地・温暖地であれば春まき(3月~4月上旬)・初夏まき(6月中旬~7月中旬)・秋まき(9月中旬~9月下旬)でき、それぞれ6月・9月・翌年4月あたりから開花します。

寒地・寒冷地では春まき(4月中旬)・夏まき(6月上旬)に種をまき、それぞれ7月・9月あたりから開花します。

撒き方:育苗トレーに種まき培土を入れて十分湿らせ種が重ならないようにバラ撒きして5㎜程度軽く覆土します。

発芽後から移植できる大きさに育つまで適宜間引きをしながら育て、本葉数枚育ったころにポットに移植するか花壇に植え付けます。

イセナデシコ(伊勢撫子)の病害虫

イセナデシコ(伊勢撫子)は害虫として「アブラムシ」、病気として「灰色かび病」「さび病」など発生することがあります。

害虫

「アブラムシ」は春先に新芽・蕾周辺・花裏・葉裏などに発生します。

陽当たりや風通しが悪い場所やで発生量が増えることがあるので、育てている環境の改善も行うと良いです。

病気

「灰色かび病」
終わった花柄や枯れた葉に発生します。主に梅雨時期など過湿期に発生しやすく、灰色~灰褐色のカビが伝播していくため、花柄や枯れ葉は早めに除去します。

「さび病」
葉に白~黄褐色の斑点が生じ、病斑が増えると葉の変形などの書状が現れ、生育も悪化します。

主に梅雨~夏場にかけて発生しやすく土の過湿や風通しが悪い環境で発生しやすくなります。

退治・治療方法

「アブラムシ」「灰色かび病」「さび病」が発生した場合では、市販の薬剤またはスプレー剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

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