サザンカ(山茶花)の育て方

サザンカ(山茶花)の基本情報

科名:ツバキ科 Theaceae
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属名:ツバキ属(カメリア属)
   Camellia
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学名:Camellia sasanqua
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開花時期:10月末~12月
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高さ:~6m
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耐暑性:強い
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耐寒性:やや強い~やや弱い
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サザンカ(山茶花)の特徴

サザンカは、ツバキや茶と同じツバキ属(カメリア属)の一種で、生垣や庭園の植栽で見かける機会の多い常緑広葉樹です。

中国でツバキの仲間を指す「山茶」を由来として「山茶花」となり、本来は「山茶花=サンザカ」という文字通りの呼び名だったものが、次第に訛り「サザンカ」へと転化したと考えられています。

ツバキ属の仲間の自生地は東北から北陸が北限で、その中でも野生種のサザンカは九州・四国などの比較的温暖な地域に自生しています。

現在生垣などで植えられているサザンカは、サザンカの園芸種やサザンカとツバキ(=ヤブツバキ)の交配種であることが多く、園芸的にはハルサザンカ(Camellia x vernalis)やカンツバキ(Camellia sasanqua Thunb. ‘Shishigashira’あるいはCamelliahiemalisなど)など呼ばれる種類の品種が植えられていることが多いです。

サザンカとツバキの違い

花姿や株姿が似ているサザンカとツバキの違いは、一般的(園芸的)にはサザンカの花弁が分かれて散るのに対し、ツバキの花は花弁と雄蕊がまとまって落ちるという違いで区別されています。

ただサザンカとツバキの交雑種といわれているカンツバキ(寒椿)も花弁が分かれて散ります。

サザンカやサザンカの仲間の特徴として、

●サザンカは花弁が分かれて散り、ツバキは花弁が雄蕊と一緒にまとまって落ちる

●サザンカは雄蕊の基部が分かれていて、ツバキは雄蕊の基部がくっついている。

●サザンカの葉柄(葉の根元の茎状の部分)に細毛があり、ツバキの葉柄には細毛はない。(ただし近縁種のユキツバキの葉柄には細毛があります)

●サザンカの子房(雌蕊の根元)には細毛があり、ツバキの子房には細毛がない。

●サザンカの葉は鋸歯(葉の縁の棘状の切れ込み)が目立ち、ツバキの葉は鋸歯がないか小さい。

などの特徴があります。

その他にもサザンカが晩秋~初冬に開花し、ツバキが早春から開花するという開花期の違いで見分ける方法もありますが、ツバキの園芸品種で「西王母」などようなの早咲き種もあるため一様にくくることは難しいです。

生物学的には、ツバキという種の対になるようにサザンカという種があるわけではなく、ツバキ属という大きなグループの中にツバキ(=ヤブツバキ)、サザンカという種があるという捉え方が正しいです。

またツバキとして流通している品種も、ツバキ(=ヤブツバキ)とツバキ属の種との交配種が多くあるため、「ツバキの特徴が良く出ている種類」か「サザンカの特徴が良く出ている種類」かという見分け方になります。

サザンカ(山茶花)の管理と置き場所

サザンカの仲間は、陽当たりよい場所から明るい日陰まで育てることができます。風通し良く排水性の良い環境が理想ですが、極度の過湿や乾燥を避ければ十分生育します。

サザンカやサザンカの園芸品種は、厳しい寒さが苦手なため暖地以外では冬期に防寒が必要です。

一方でカンツバキやハルサザンカはサザンカより寒さに強いため、温暖地でも比較的寒さが厳しくない地域であれば周年屋外で管理できますが、多くの品種で冬期の-5℃を目安として、気温が下回るようであれば防寒をすると良いです。

サザンカ(山茶花)の年間管理表
 
サザンカ(山茶花)の植え替え

植え替えは3月中旬~4月中旬、または9月中旬~10月中旬に行います。

これは寒さが終わる3月から生育速度が上がきる前の4月までの期間と、厳暑が過ぎた9月から寒さの訪れる前の10月という期間です。

露地植えの場合は、株の根回りの大きさにより掘る深さや大きさが変わります。

およその目安で、根回りの大きさの2~3倍の広さに穴を掘り、掘り返した土に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けます。

鉢植えの場合は、成長にともない株に対して鉢が小さくなるようであれば、適宜植え替えを行い鉢のサイズを大きくします。

また植え替え時の鉢の大きさは1回り~2回りまでにします。大きすぎる鉢を選んだ場合、生育が良くなる一方で翌年の花付きが悪くなることがあります。

サザンカ(山茶花)の用土の選び方

赤玉土小粒:鹿沼土小粒:ボラ土小粒:腐葉土=1:1:1:1を混合した土に植え替えます。

市販の花や野菜用の培養土で育たないわけではないですが、植え付け初期は土の過湿ぎみになるため根腐れを起こすことがありますので避けた方が良いです。

庭や花壇に植える場合は、完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

サザンカ(山茶花)の水やり

サザンカの水やりは一般的な樹木の水の与え方に準じます。

庭植えの場合は、植えた直後にたっぷりと水を与えた後は、一夏は雨が降らない日の夕方にはたっぷりと水を与えます。

9月末から10月以降で気温が下がり始めたら、おおむね雨まかせでも大丈夫です。

鉢植えの場合は基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

なお花芽が付く夏の前までは乾かし気味に管理し、花芽が付いた夏以降は花芽生育が良くなるように乾ききらないように水を与えることで、枝の徒長を防ぎ花付きを良くすることができます。

サザンカ(山茶花)の肥料の与え方

植えるときに完熟有機肥料と完熟堆肥を元肥として根回りに与えます。

もし完熟まで至っていない(発酵や未発酵の)有機肥料や堆肥の場合は、根や根鉢に直接当たらないように混ぜます。

その後新芽が出始める3月あたりに、芽の成長を促すため有機肥料を株元を避つつ株回りに与えます。

サザンカ(山茶花)の剪定・刈り込み

サザンカの花芽はその年の夏までに伸びた枝につきます。そのため剪定は前シーズンの開花後から5月上旬あたりまでに行います。

剪定が遅れた場合は新芽の成長も遅れてしまい、花が付かなくなることがあります。

また夏以降に剪定をする場合は、剪定とともに花芽を切り落とすことになるので、全部の枝を剪定することは避け、剪定しない枝を残すことで剪定しつつ咲かせることができます。

剪定は各枝によく陽が当たるように、枯れ枝、同じ向きに伸びている枝(並行枝)、交差している枝(交差枝)、垂れ下がるように伸びている枝(下向き枝)、勢いよく伸びすぎている枝(徒長枝)などを切り取ります。

その後、樹木内側への風通りが良くなるように、幹側へ向かって伸びる枝(逆さ枝)、幹から出る勢いの弱い枝などを切り取ります。

サザンカ(山茶花)の増やし方

サザンカは「挿し木」「採り木」「種まき」で増やします。

挿し木

6月下旬~7月あたりに行います。その年に伸びた枝(新梢)のうち、極度に未熟な枝(剪定後に出た若葉のある枝など)を避けつつ充実しきる前の枝を使います。

枝を15㎝前後で切り取り、挿し穂を数時間水につけて給水させます。

葉を挿し穂上部から3~4枚残し、挿し穂下側の葉を取り除きます。鹿沼土小粒か赤玉土小粒のような清潔な土を準備し、水をかけて湿らせた後、挿し穂を土に挿します。

発根剤などを使うと成功率が上がるのでお勧めです。

日陰で水を与えながら管理します。新芽が出始めたら発根したと考えられますので、根を傷めないよう土ごと苗を取り出し、植え替えします。

採り木

樹皮を木質部を残してカッターやナイフなどで剥ぎ取ります。

剥ぎ取られた部位に湿らせた水苔を当て、ビニールなどで水苔が乾かないように覆い紐でビニールの上端と下端をくくります。

その後、水苔が乾く前に給水して発根するまで管理します。少なくとも数か月間はビニールをつけたままにし、十分な根量になるまで育て、植え替え時期の3~4月に切り取り土へと植え替えます。

ただし根の量が増え水苔が頻繁に乾くようであれば、3~4月を待たずに切り取って植え替えます。

種まき

成熟した実が弾け、大きめの種ができます。種は乾燥すると発芽しなくなるので、採取後種まきをすると良いです。

山野の木なので、土質さえ合っていればばら撒きでも芽は出ますが、雑草に混ざって分からなくなることがあるため、市販の種まき用土か花用の土に撒くことをお勧めします。

種まきの土や花用の土をポットに入れて、1粒ずつ種を入れ、軽く土に埋め込みます。たっぷりと水を与えた後、発芽するまで明るい日陰に置きます。

サザンカ(山茶花)の病害虫

害虫として「イラガ」「チャドクガ」「カイガラムシ」、病気として「すす病」「花腐菌核病」などが発生することがあります。

害虫

「イラガ」
イラガ幼虫は黄緑色の短い毛虫で、棘に触れると激痛があることから地域によってはデンキムシという名でよばれることもあります。発生時期は6月~7月、9月~10月上旬の年2回です。

「チャドクガ」
チャドクガの幼虫は細かな毛をもつ毛虫で、毛虫本体または散った毛に触れることで痒みを伴う発疹がでます。発生時期は5月~6月、8月~9月の年2回です。

「イラガ」「チャドクガ」の行動様式はよく似ていて、親蛾は葉裏に卵嚢を産み付け、孵化した幼虫は葉裏に集まり集団で葉裏から食害します。

その後、ある程度育った幼虫は単独で行動し始め木全体へと散って食害します。

特に幼虫が小さいころは葉裏のため気づきにくく対応が遅れたり、気づかないうちに刺されることもあります。

また「イラガ」「チャドクガ」の発生時期を合わせると、5月~7月、8月~10月上旬までどちらかの虫はいることを考え、剪定などで不用意に触れないような対策をすると良いです。

発生時期が決まっているため、それぞれの時期に数回消毒をして発生を予防すると良いです。

「カイガラムシ」
白い蝋状の殻を被った害虫が枝などに発生します。被害が酷くなると葉が黒く汚れる「すす病」を併発することがあるため注意が必要です。

親虫は殻があるため退治に時間がかかるので、鉢植えならば消毒の前に柔らかい布や使い古しの歯ブラシなどで親虫をある程度取り除いてから薬剤をかけます。

生垣などの場合は手作業で取り除くには株が大きいため、消毒薬を満遍なく噴霧することで退治した方が良いです。

また極度の日陰や風通しが悪い場所で大発生しやすいため、剪定などで発生しにくい環境作りも大事です。

病気

「すす病」
「カイガラムシ」の排泄物が葉表面に付着し、排泄物を養分にすす病菌が発生し黒く汚れたようになります。

根本原因である「カイガラムシ」を退治することで発生を予防できます。

「花腐菌核病」
花に茶褐色な病斑があらわれ被害が酷いと開花後早くに落花します。

開花時期に雨が多くなると発生しやすくなります。鉢植えであれば、花が濡れないようにすることで発生を抑えることができます。

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