アヤメ(菖蒲)の育て方

アヤメ(菖蒲)の基本情報

科名:アヤメ科 Iridaceae
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属名:アヤメ属(イリス属)
   Iris
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学名:Iris sanguinea
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和名:アヤメ(菖蒲・文目・綾目)
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別名:かっこう花(地域によって花の種類は異なる)
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英名:blood iris
   blood-red iris
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原産:日本(北海道~九州)・朝鮮半島・中国・モンゴル・ロシア
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開花時期:5月
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高さ:20㎝~60㎝
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耐暑性:強い
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耐寒性:強い
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アヤメ(菖蒲)の特徴

アヤメは東アジア~ロシア原産の多年草で、日本では北海道・本州・四国・九州と広く自生している在来種です。

ハナショウブ・カキツバタなどと共に古くから花を愛でられていて、花色は「菖蒲色(あやめ色)」という「少し青みが薄い紫色」~青紫花・白花などがあります。(※)

またアヤメはハナショウブやカキツバタと比べて陸地性が強く、山野の草地などに自生いているため、花壇や庭への植栽もしやすく民家の庭や田畑の隅などに植栽されている株(または生えている株)も良く見かけます。

ハナショウブほど園芸品種は作られていないものの、草丈が15㎝前後の「チャボアヤメ(矮鶏菖蒲=Iris sanguinea ‘Pumira’)」、中央の花弁(内花被片)が発達した「クルマアヤメ(車菖蒲=Iris sanguinea ‘Stellata’)」等の園芸品種があります。

(※1)「菖蒲色(しょうぶ色)」と読む場合は「少し青みが濃い紫」で、「菖蒲色(あやめ色)」とは色彩規格が異なります。

アヤメ・ハナショウブ・カキツバタの違い

「何れ菖蒲か杜若(いずれアヤメかカキツバタ)」

という慣用句は「(アヤメもカキツバタも良く似ていて)どちらも美しく優劣付け難い」ことを意味しますが、アヤメ属のアヤメ、ハナショウブ、カキツバタはよく似た花で見分けが付きにくいものです。

さらに端午の節句で菖蒲湯に使うショウブも「菖蒲」ですし、アヤメの漢字は「文目、綾目」の他に「菖蒲」が充てられています。

一方でハナショウブの名所で「あやめ園」という名が付いているなどハナショウブを「アヤメ」と呼ぶこともあり非常にややこしいです。

これはアヤメやショウブの名が示す植物が時代で移り変わったことに由来するようです。

現在のショウブが古くは「アヤメ」と呼ばれており、現在のアヤメかハナショウブが「ハナアヤメ」と呼ばれていたようです。

時代が下るとアヤメは現在のアヤメやハナショウブを指すようになり、ショウブを指していた「アヤメ」は漢名の「菖蒲」が充てられ現在のようにショウブと呼ばれるようになったようです。

そのため現在でも「アヤメ」と呼ぶ場合は、広い意味でアヤメやハナショウブなどのアヤメの仲間を指す場合と、分類上の植物としてのアヤメを指す場合があります。

ではアヤメ・ハナショウブ・カキツバタの違いというと決定的なのは自生環境です。

アヤメは完全陸生で3種の中では乾いた環境で生育します。カキツバタは湿地や水辺などの水中か極めて多湿の場所で生育し、ハナショウブは陸生ですが水辺近くの陸地など多湿環境で生育します。

これらはそのまま育てるときの環境作りに直結するので、3種の違いであるとともに育てるときの基本として知っておくと失敗しにくくなります。

アヤメ(菖蒲)の管理と置き場所

アヤメは陽当たりよく、風通りと排水性の良い環境で育てます。性質は強健なので環境さえ整っていれば管理はとても楽になります。

冬には地上部が枯れる宿根性の多年草で、春から芽吹いて、温暖地の場合は5月に開花し、太い根茎が半地中を横に張って生育しながら年数が経てば群生した株に育ちます。

基本種は50~60㎝と草丈が高く、根は草丈を支えるようによく張るため、地植えの場合は少し深めに掘り返した場所に植えた方が良く育ち、鉢栽培の場合は深鉢を使った方が良いです。

アヤメ(菖蒲)の年間管理表
 
アヤメ(菖蒲)の植え替え

アヤメは2月中旬~3月の芽吹き前または開花後(温暖地では6月~7月上旬)に植え替えを行います。

アヤメは根が良く張るため、鉢植えの場合は深さがある鉢を使い、地植えの場合は深く掘り返してから植え付けると育ちが良くなります。

以下に「鉢植えの場合」「庭植えの場合」の管理について説明します。

鉢植え

鉢の場合は根詰まりしやすいので、基本的に毎年植え替えを行って根や根茎を整理と土替えを行います。

芽がある方向に根茎が伸びていくので、植え替えの際は根茎が生育できる場所をあけるように植え替えます。

なお植え替える際は連作障害を起こさないように、新しい土と新しい鉢を使って植え替えます。

庭植え

排水性を良くするために完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜ、球根上部が地表から10㎝前後の深さになるように植え付けます。

庭植えの場合は植え替えの必要はないですが、株が茂りすぎる場合は数年に1回掘り上げて株分けをした上で植えなおします。

株分け後に植えなおす場合は、連作障害を起こさないように前シーズン植えていた場所とは違う場所に植えなおします。

アヤメ(菖蒲)の用土の選び方
鉢植え

市販の草花用の培養土で植え替えできます。混合する場合は、赤玉土小粒:腐葉土=7:3の用土で植え替えます。

また植え替え時に元肥として根を傷めないような緩効性の化成肥料を土に混ぜて植え付けます。

庭植え

排水性を良くするために完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

アヤメ(菖蒲)の水やり
鉢植え

春の芽吹き後から秋の葉が枯れるまでの間は、一般的な草花と同じように鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと水を与えます。

葉が枯れて休眠すると吸水量も減るため、雨が当たる場所ではあまり水やりの必要はなくなりますが、晴天が続いて表土が乾く場合は水を与えます。

庭植え

植え付け後たっぷり水を与えた後は基本的に水やりをする必要はありません。

アヤメ(菖蒲)の肥料の与え方

鉢植え・庭植えともに、植え付けの際に根を傷めないような緩効性の化成肥料を元肥として土に混ぜ込みます。

庭植えの場合は初年度は元肥のみで、以降追肥を与えなくても良く育ち開花します。

鉢植えの場合は、春の芽吹きの時期(温暖地では3月あたり)・秋の根茎に栄養を貯える時期(温暖地では9月あたり)に追肥を与えます。

追肥は緩効性の化成肥料をパッケージ記載の分量に従って、鉢縁(または株元から離した株の周囲)に与えます。

アヤメ(菖蒲)の増やし方

アヤメは「株分け」で増やします。

株分け

株分け時期は植え替えと同じく、芽吹き前(2月中旬~3月)・開花後(6月~7月上旬)にに行います。

鉢から根鉢を抜き出すか庭から堀り上げ、土を落として根茎だけの状態にして、ハサミなどを使って根茎を切り分けて株を分けます。

根茎を切り分ける際は、あまり小さく切り分けると開花しにくくなるので親株を2~3分割するくらいが良いですが、小分けに切る場合では切り分ける根茎に芽があることを確認して切るように気を付けます。

アヤメ(菖蒲)の病害虫

害虫として「二カメイチュウ」「アヤメツブミノハムシ」などが発生することがあります。

害虫

「二カメイチュウ」
二カメイガ(体長1㎝程度の小さな蛾)の幼虫で、5月~7月に発生して幼虫が葉や茎内に侵入して食害しますが、茎芯を食害されると上部の茎葉が枯れます。

冬期にイネ科植物などの茎内で幼虫が越冬するため、周辺のイネ科雑草を除去することで被害を抑えることができます。

「アヤメツブミノハムシ」
体長2㎝強の黄褐色の甲虫で、成虫は葉を削り取るように食害し、幼虫は地中で根茎を食害します。

5月あたりから発生し、成虫の食害は茶褐色の線状の食害痕として残り、被害が大きいと葉先から枯れ始めます。

また幼虫は根部を食害するため、成虫・幼虫ともに大発生すると枯れることがあります。

退治・治療方法

各害虫が発生した場合では、市販の薬剤またはスプレー剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

また茎や根部を食害する害虫は散布による退治が難しいので、浸透移行性殺虫剤の粒剤タイプを株の周囲に撒くことで予防と退治ができます。

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