クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の育て方

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の基本情報

科名:キンポウゲ科 Ranunculaceae
————————
属名:クリスマスローズ属(ヘレボルス属)
   Helleborus
————————
学名:Helleborus × hybridus
————————
別名:クリスマスローズ
————————
英名:hellebore
   hellebore hybrid
————————
原産:園芸品種
————————
開花時期:1月~3月
————————
高さ:15㎝~50㎝
————————
耐暑性:やや弱い~やや強い
————————
耐寒性:強い
————————

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の特徴

クリスマスローズは彩の少なくなる冬~春の庭を華やかにできるヘレボルス属の多年草で、管理も楽で花色も増えたことで冬の庭に欠かせない存在です。

「クリスマスローズ(Christmas rose)」という名は、本来ヨーロッパでクリスマスあたりに開花するヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)を指す名ですが、日本ではヘレボルス属全体に対してクリスマスローズと呼ぶことがあります。

店頭に多く並ぶ花色豊かな「ガーデンハイブリッド」と呼ばれるクリスマスローズは、レント(Lent:四旬節)に開花するレンテンローズ(Lenten rose/Helleborus orientalis)を元に改良され、開花はクリスマスではなく1月あたりから開花が始まります。

日本では2006年~2008年辺りからの大きなブームもあり、クリスマスローズの魅力が広く伝わるとともに、海外のナーセリーからのクリスマスローズの血筋や育種技術が全国的に広がりました。

現在では育種家の方々の努力もあり花色・花形だけでなくシングル(一重)~ダブル(八重)、小輪~大輪、矮性種など幅広い魅力があります。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の管理と置き場所

クリスマスローズの管理は晩秋~春は陽当たりの良く、夏場は日陰になる落葉樹の下のような場所が良いです。

ある程度の日陰にも耐えますが、日陰特有の過湿環境は好まないので排水と風通しの良い環境で育てます。

鉢栽培する場合は、やや太めの根が深く張るため鉢は深鉢を使い、1~2年に1回の土替えと数年に1回株分けを行いながら育てます。

夏場の日差しで鉢や株元が熱くなると株を傷めるため、夏越しの際は日陰に移動させるか、一回り大きな素焼き鉢に落とし込む「二重鉢」状態で日差しや熱から根を守ります。

夏越し

クリスマスローズの仲間は全てが夏に休眠する多年草ですが、市販されているクリスマスローズの中にはオリエンタリス系以外のクリスマスローズも多く店頭を彩るため、タイプによって夏越しの注意点が変わります。

[特徴1]
花色が豊かで流通量も多く、開花株は大半の葉を切り落とされた状態で店頭に並ぶもの。

ヘレボルス・オリエンタリスを主としたガーデンハイブリッドで、原種のオリエンタリスは落葉樹林だけでなく牧草地などにも自生しているため、どちらかといえば陽の良く当たる環境の方が花付きが良くなります。

地植えならば比較的日差しにもよく耐え、排水の良い土壌であれば夏の多雨でも問題なく育ちます。

鉢栽培の場合は、比較的日差しに強いものの夏場の日差しで鉢や株元が熱くなると株を傷めるため、夏越しの際は日陰に移動させるか、一回り大きな素焼き鉢に落とし込む「二重鉢」状態で日差しや熱から根を守ります。

[特徴2]
花色が緑がかった赤や白などの比較的落ちついた色が多く、葉が付いた状態の開花株として店頭に並ぶもの。

ヘレボルス・リビダス(H. lividus)やヘレボルス・アーグチフォリウス(H. argutifolius)などの有茎種系交配種、またはニゲルのような中間種も含め交配された園芸種で、夏場の多湿(ニゲルの性質が強いと高温も避ける)が苦手です。

夏場は高温多湿にならないよう水やり頻度を抑えたり、日陰に移動した方が良い品種もあるため、比較的鉢栽培が向いています。

地植えの場合は夏越ししやすいように落葉樹の下で盛り土などの排水の良い土壌を準備して植え付けます。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の年間管理表
 
クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の苗の選び方

オリエンタリス系のクリスマスローズは多くが実生株(種から育てた株)で、開花株は流通時に古葉を切り落とした状態で店頭に並ぶことが多いです。

苗を選ぶ場合

一部メリクロン株(培養株)は苗のラベルと同じ花が咲きますが、育種家の未開花実生株はラベルの花とは異なる花が咲くことがあります。

より魅力的な花を求める場合は、一般の開花株やメリクロン株では難しいため、花色は分からないものの育種家の未開花実生苗が良いです。

一方で庭の植栽の一つとして選ぶ場合は、比較的安価で花色が分かる開花株やメリクロン株が良いです。

開花株を選ぶ場合

オリエンタリス系クリスマスローズの開花株は、多くが実生株のため個体ごとに株の性質も異なり、流通時に古葉を切り落とした状態で店頭に並ぶことが多いので、一般の草花とは選び方が少し異なります。

選ぶポイントは花茎の根元が太くしっかりした株は良い花が咲きやすくなります。

また新葉が出ている株の方が状態が良く見え選びがちになりますが、花より葉が茂りやすい個体の可能性もあるので、花数・葉数が少なくても根元が太い株を選んだ方が良いです。

その他は鉢内に落ちたネクタリ(蜜腺)や雄蕊などに灰色のかびが出ている株、株元に水浸状の染みがある株、新芽にタールを塗ったような黒い染みがある株は避けます。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の植え替え

10月~12月が植え替え適期ですが、翌年3月あたりまで植え替えは行えます。

特に根詰まり気味の株は10月に根を解して傷んだ根を取って植え替えた方が新根が伸びやすく根付きやすいです。

庭への定植・移植

寒さには強いものの土が凍る厳寒期は避けて、10月~11月・翌3月あたりに行います。

鉢から庭への定植は、特に根詰まり気味の株は根を解して傷んだ根を取って植え替えた方が新根が伸びやすく根付きやすいです。

移植する場合は、10月~11月に行った方が良いですが、その他の時期でも根痛みが少なくなるようある程度大きく掘り起こせば、移植後も問題なく育ちます。

鉢栽培の植え替え

生育旺盛なので基本的に毎年植え替えを行い、根を解して傷んだ根を取り2回り大きな鉢に植え替えを行います。

年を追うごとに鉢のサイズが徐々に大きくなりますが、10号以上の鉢では夏場に鉢内が過湿になりやすく根や株が傷みやすくなるので、株分けして鉢のサイズを落とします。

開花株購入後の植え替え

1月あたりから開花株が店頭に並ぶようになり、2月~3月あたりまでは開花株を入手できます。

1月~2月上旬に流通する開花株は加温して咲かせていることも多いので、入手後そのまま雪・霜が直接あたる屋外には出さず、陽の当たる屋根下などで慣らした方が良いです。

開花株の多くは根詰まりしていることが多いので、花が咲き終わり新芽がでるまでに根を解して2回り大きな鉢に植え替えるか、地植えにします。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の用土の選び方

土の過湿が続くことを嫌うため、保湿性のある水通りの良い用土で植えます。

市販のクリスマスローズ用の培養土で植え替えるか、ブレンドする場合は赤玉土小粒:腐葉土:軽石小粒:鹿沼土小粒=4:3:1.5:1.5の土に植え替えもできます。

庭や花壇へ植え付ける場合は、土質改良のために完熟の牛糞または馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

また水通りの悪い用土の場合は軽石小粒を混ぜ込んだり、レイズドベット(周囲より一段高く土を盛る)にして排水を良くすると育ちやすくなります。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の水やり

クリスマスローズの水やりは一般的な花の水の与え方に準じます。

庭植えの場合は、植えた直後にたっぷりと水を与えた後は、おおむね雨まかせでも大丈夫です。

鉢植えの場合は基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

なおオリエンタリス系とは異なる品種の場合は、夏の多湿で根腐れすることもあるため、表土が乾いた後すぐに水やりをせず鉢を持ちあげて軽く感じるようになるまで待ってから水やりすると過湿による根腐れが起きにくくなります。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の肥料の与え方

定植時に元肥として根が傷まないような緩効性の化成肥料を土に混ぜ込んでから植え付けます。

地植え

地植えの場合は追肥はなくても良く育ちますが、10月に緩効性の化成肥料を株回りに与えると生育が良くなります。

また土上に完熟腐葉土(または完熟堆肥と混合して)を敷き詰めておくと、土質悪化による生育悪化を防ぐことができます。

鉢植え

鉢植えの場合は10月~3月までは月に1回頻度で緩効性化成肥料を置き肥として与えます。

なお5月までには肥効が切れた方が良いので、最後の施肥は3月末~4月上旬までにします(肥効1ヵ月の肥料の場合)。

また10月~4月までは置き肥に加えて液体肥料も月に1~2回の頻度で与えます。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の増やし方

クリスマスローズは「株分け」「種まき」で増やします。

株分け

時期は10月~12月が植え替え適期ですが、厳寒期を避けて翌年3月あたりまで行えます。

良く切れるナイフやカッターなどで3芽以上で株を分割します。

なお株分けに使う道具由来でウイルス病が伝播することがあるので、思い入れの強い株はウイルス用消毒剤(第三リン酸ナトリウム溶液など)でナイフやカッターを株毎に消毒しながら使った方が良いです。

種まき

種まきは5月~6月あたりに採種したものをそのまま撒くか、秋まで乾燥させないように保存して9月~10月に撒きます。

●採種方法

受粉後子房が膨らんで種が熟すと子房が割れて種が零れ落ちるので、種を確実に採種するためには茶漉し袋などで花を覆い、種が確保できるうようにします。

袋掛けする際は、ネクタリや雄蕊などが入ってカビが発生しないように取り除いてから花全体を覆うように袋掛けします。

●種の保存

種の発芽には乾燥しないように管理しつつ高温期とその後の気温の低下が必要なため、茶漉し袋に取った種を湿らせた土内に保存する方法が比較的簡単です。

必要なもの
・赤玉土小粒
・鉢
・パーライトまたはバーミキュライト
・殺菌剤(ベンレートまたはオーソサイドなど)

まず種が袋内で種が重なって傷まないように、種と同量のパーライトかバーミキュライトを入れて軽く攪拌します。

種の保存期間が長いので種が保存中に腐らないよう、殺菌剤を規定量で薄めた水の中に半日くらい袋ごと沈めて殺菌します。

鉢に赤玉土を入れて種の入った茶漉し袋を入れ、さらに赤玉土を被せて袋を埋め込みます。

もし袋が多い場合は、赤玉土を何段かの層にして袋同士が重ならないよにします。

最後に水をたっぷりとかけから鉢ごと日陰に置き、秋まで土が乾かないように水を与えます。

●種まき

種を撒く場合は、育苗トレーやポットなどに赤玉土:バーミキュライト=8:2の用土を入れて種を撒き、1㎝程度覆土してからたっぷりと水を与えます。

発芽するまで明るい日陰に置いて、発芽後本葉が2~3枚まで育った頃に1株ずつポットや鉢に植え替えます。

移植後1~2週間までは日陰に置き、以降は陽当たりの良いところで苗を大きく育てます。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の手入れ
古葉取り

12月あたりで新芽・花芽が見え始めたら、前年の古い葉を株元近くから切り取ります。

切り取りに使うハサミからウイルス病が伝播することがあるので、思い入れの強い株は一株毎にウイルス用消毒剤(第三リン酸ナトリウム溶液など)で消毒しながら使った方が良いです。

花柄摘み

通常花として観賞している部分はガク(萼)にあたり、咲き終わった後も花茎に残って観賞することができますが、ある程度咲き進んで花弁(萼片)が傷んできた場合は、一花毎に摘み取るか、花茎を株元近くから切り取ります。

一花を摘み取る場合は手で取ることができますが、花茎を株元近くから切り取る場合はハサミで切り取る必要があります。

古葉取りと同様に、思い入れの強い株は一株毎にウイルス用消毒剤(第三リン酸ナトリウム溶液など)で消毒しながら使った方が良いです。

クリスマスローズ(ガーデンハイブリッド)の病害虫

害虫として「アブラムシ」「ハダニ」「ハマキムシ」、病気として「灰色かび病」「モザイク病」「ブラックデス」などが発生することがあります。

害虫

「アブラムシ」
花や新芽などに発生しやすく、大発生して蕾や成長点に被害がでると葉や花に生育異常になることがあります。

またアブラムシのような吸汁害虫はモザイク病やブラックデスなどのウイルス病の伝播源にもなります。

特に生育期間中の陽当たり・風通しが悪い環境下で発生しやすいため、環境改善を行うことで発生を抑えることができます。

「ハダニ」
葉裏に発生し、極度に乾く環境で発生しやすく、大発生するとクモの巣のような細かな糸が葉裏に発生します。

地植えの場合は発生しにくいですが、鉢栽培で夏場に屋根下などの雨の当たりにくい環境に移動した場合などで発生しやすくなります。

水を嫌うため定期的に葉裏や株回りに水をかけることで発生を抑えることができます。

大発生した場合はクモの巣状の糸で薬剤が当たりにくくなるため、水を強めの勢いで葉裏からかけて糸を吹き飛ばしてから消毒します。

「ハマキムシ」
ハマキムシは幼虫が周囲の葉を巻き取った巣を作り、内側から幼虫が葉を食害します。

葉が比較的柔らかい春に発生しやすく、予め浸透移行系の薬剤で防除するか被害葉がでた場合は摘み取ります。

病気

「灰色かび病」
低温環境で多湿の場合に発生しやすく、咲き終わって落ちた雄蕊やネクタリなどから発生します。

地植えでは風通しも良いため大きな被害がでることは少ないですが、鉢栽培では土上に落ちた雄蕊やネクタリから灰色~灰褐色のカビして周辺に伝播していくことがあるので、定期的に土上をきれいにして発生を抑えます。

「灰色かび病」
主に新芽や新しい葉などに濃淡のあるモザイク状の模様が表れ、葉が委縮や縮れたり葉になったり、生育が悪化します。

アブラムシなどの吸汁害虫で発生することがある他、感染株に使ったハサミやナイフから感染することがあります。

ウイルス病なので発病後の治療はできないため、感染株は他の株に感染する前に除去して破棄します。

「ブラックデス」
新芽や新しい葉にタールを塗りつけたようなツヤのある黒い染みが発生し、生育が悪化します。

モザイク病と同じくウイルス病で、アブラムシなどの吸汁害虫で発生することがある他、感染株に使ったハサミやナイフから感染することがあります。

発病後の治療はできないため、感染株は他の株に感染する前に除去して破棄します。

退治・治療方法

各病害虫が発生してしまった場合は、市販の薬剤またはスプレー剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

一方でウイルス病を発病した株は治療ができないため、他の株に感染を広げる前に除去して廃棄します。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする