シクラメン(鉢花)の育て方

シクラメンの基本情報

科名:サクラソウ科 Primulaceae
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属名:シクラメン属 Cyclamen
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学名:Cyclamen persicum
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和名:シクラメン
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別名:ブタノマンジュウ(豚の饅頭)
   カガリビバナ(篝火花)
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英名:Florist’s cyclamen
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原産:ヨーロッパ南部・北アフリカ・中近東
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開花時期:10月~3月
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高さ:10㎝~70㎝
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耐暑性:弱い
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耐寒性:やや弱い
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シクラメンの特徴

シクラメンはヨーロッパ南部・中近東・北アフリカなどの地中海周辺地域に自生するシクラメン・ぺルシカム(Cyclamen persicum)を中心に他の原種などと交配しながら生み出された園芸品種群で、冬を彩る代表的な鉢花の一つです。

赤・ピンク・白などが一般的な花色で、特に赤~ピンクの濃淡や複色などバリエーションが多く、その他にも黄系や青紫系の花なども作られていて花色の幅が広がっています。

また花弁が上向きに反った基本形の花形以外に、八重咲き・フリンジ咲きや花弁が反らずに下向きに咲く品種等もあり、花の大きさも大輪~小輪と様々な品種があります。

また葉は緑に白く模様が入る品種が多いですが、葉全体がシルバーリーフの種類もあり、花色・花形だけでなく葉色の華やかさを楽しめる品種もあります。

冬の花として店頭に並びますが開花期間は長いため、暖房の入らない陽当たりの良い窓辺で冬から春にかけて長く花を楽しむことができます。

シクラメンの名前の由来

Cyclamen」はギリシヤ語の「kýklos(螺旋・円)」が由来で、花後の花茎が円形に丸まる様を表しています。

属名から一般的に「シクラメン」と呼び、古い図鑑などで「サイクラメン」という記載を見かけることがありますが現在ではほぼ「シクラメン」という呼び名で統一されています。

シクラメン属の多くの種で花後の花茎は円形に丸まりますが、鉢花として流通するシクラメンは花茎があまり丸くならないシクラメン・ぺルシカムを元にしているため、花後の花茎は緩くカーブしながら株回りや葉下に倒れます。

花茎立ち上がり花弁が上に反って咲く様から「カガリビバナ(篝火花)」という別名や、地表できる丸い球根(塊茎)から「ブタノマンジュウ(豚の饅頭)」という別名もあります。

シクラメンの管理と置き場所
開花株の管理

シクラメンの鉢花は初冬あたりから店頭に並び始め、年末に品種数や流通量が一番多くなります。

シクラメンは15℃前後の気温が理想的で、10℃以下の低温では株が傷むことがあり、25℃以上の気温では葉や花が徒長したり葉が黄化することがあります。

そのためシクラメンの開花株を入手した後は、室内の暖房の入らない陽が良く当たる窓辺に置いて管理します。

夏越し~開花

シクラメンは地表部分に球根(厳密には「塊茎」)があり、秋から春まで生育し夏に休眠する多年草です。

高温が苦手なので一年性の鉢花として扱われることもありますが、夏越しさせて翌シーズンに花を咲かせることもできます。

シクラメンを夏越しさせる場合は、乾かして葉を落とし完全に休眠させる方法と、土の湿度を保った状態で葉を残し半休眠状態で夏越しさせる方法があります。

休眠させる場合は翌年から咲き始めますが、半休眠で夏越しさせた場合は年内から咲き始めます。

休眠夏越し
晩春~初夏で葉が黄化し始めたら水を切って土を乾かし葉を枯らします。

夏期は雨の当たらない明るい日陰に置いて夏越しし、9月あたりで芽吹き始めたら陽当たりに移動させます。

半休眠夏越し
気温が上がるとともに水やり頻度を減らしつつも夏も土の湿度を維持します。

初夏までに風通し良く明るい日陰に移動させて、高温にならないように管理します。

特に湿度が高い状態で地温が上がると球根が腐りやすいため、樹下や他の植物の合間などの土の温度が上がりにくい環境に置くと夏越しさせやすくなります。

9月あたりから徐々に陽当たりに移動させ、水やりも頻度も上げ、葉の数を増やしつつ開花させます。

シクラメンの年間管理表
 
シクラメンの株の選び方

葉数が多いほど開花量も増えるので、葉の大きさが比較的揃っていて葉数が多い株が良く、葉の上だけでなく葉下まで色々な大きさの蕾がある株を選ぶと長く花を楽しめます。

また株の内側(葉の付け根当たり)に浸水状の模様や灰褐色のカビなどがないか確認すると良いです。

シクラメンの植え替え

冬に店頭に並ぶシクラメンの開花シーズン中の植え替えは必要ありません。

多年草として翌シーズンに開花させる場合は夏越し後(9月上旬~中旬)に同じ大きさの鉢か一回り大きな鉢に植え替えます。

半休眠状態で葉が残っている株は根鉢から抜き取り1/3~半分程度落として新しい鉢に植え替えます。

休眠状態で葉がない株は根鉢の土を全て落とし球根だけにして新しい土で植え替えます。

どちらの植え替えの場合でも、球根が土内に埋まらないように球根上部半分程度を土上にでるように植え替えます。

シクラメンの用土の選び方

市販の花用の培養土でも大丈夫です。土の過湿が続くことを嫌うため排水の良い用土で植えます。

根腐れが気になる場合は、市販の培養土に赤玉土小粒や軽石小粒などを1~2割まぜて排水を良くしたものを使うこともできます。

またブレンドする場合は赤玉土小粒:腐葉土:軽石小粒(または日向土小粒)=4:4:2の土に植え替えもできます。

シクラメンの水やり
底面給水鉢の水やり

店頭に並ぶ鉢花シクラメンの多くが底面給水鉢(鉢下に水を貯める場所がある鉢)に植えられていることが多く、球根や葉元が湿って病気が出ないように基本的に鉢底に備え付けられた貯水部に水を入れます。

給水の際は貯水皿に満タンに水を入れると過湿で根腐れすることがあるので、貯水皿上部に空間ができるように8割程度水を加えます。

次の水やりは貯水皿の水がなくなって1日~数日後くらいに再び8割程度の水を加え、以降は貯水皿の水がなくなる度に同じやり方で水を与えます。

なお基本的に貯水皿から水を与えますが、月に1回程度は球根を濡らさないように気を付けつつ上部から水を与えて、土内の余分な肥料や老廃物を流し出すと健康的に育ちます。

通常の鉢での水やり

底面給水鉢ではなく一般的な鉢にシクラメンが植えられている場合は、他の鉢花と同じく表土が乾いたらたっぷりと上部から水を与えます。

ただし球根や葉元などが濡れると病気の原因になるため、球根周辺が濡れないように水差しなどで丁寧に水を与えます。

またシクラメンの鉢の表土は葉で隠れて見えないため、表土の乾きは葉を避けて確認する必要があります。

シクラメンの肥料の与え方

9月~5月上旬に、底面給水鉢であれば貯水皿に液体肥料を薄めて水やり時に与え、通常の鉢に植えられている場合は液体肥料を月に2回の頻度で与えます。

シクラメンの増やし方

シクラメンは「種まき」で増やします。種は前年度採種したものを使いますが、親株と同じ性質(花色や育ち方など)にはなりません。

また品種によっては種が付きにくいものもあります。

採種

受粉が終わった花茎はやや丸なって葉の下や葉の周りに倒れ、その後実が大きくなります。

種は数か月で実が付くので、採種したい場合は2月~3月あたりから花を全て摘み取らずに採種用に花茎を残します。

実は熟すと先端が割れて内部に数㎜の黒~茶褐色の種があるので、採種して秋の撒き時期まで冷暗所で保管します。

種まき

種まきは9月末~10月あたりが適期です。

シクラメンの種はエライオソームという糖やアミノ酸からなる栄養分が表面にあって、エライオソーム目当てのアリなどに種を運ばせて巣穴で発芽したりします。

そのためシクラメンの種は嫌光性種子(光が当たらない環境下で発芽する種子)のため、種まきの際も土内に埋めて発芽させるか、地表に種を撒く場合は段ボールなどを被せて発芽まで暗くします。

ポットや育苗トレーに培養土または種まき用土を入れて、種を5㎜~1㎝程度の深さになるよう土を被せ段ボールで覆うか、種に光が当たらないように2㎝程度埋めこみます。

その後たっぷりと水を与え、おそよ1ヵ月~2ヶ月くらいで発芽するので乾かないように水を与えつつ管理します。

発芽後、育苗トレーの場合は本葉が数枚になった頃に、根を傷めないように丁寧にポットに移し替えます。

シクラメンの手入れ
花柄・枯葉摘み

咲き終わった花柄(および花茎)・黄化した葉・枯葉は病気の原因になるため適宜摘み取ります。

また花茎や葉柄の摘み残しがあると、残った茎が病気の原因になるため、付け根から摘み取ります。

摘み取り方は、球根を抜き取ってしまわないように株元を押さえ、花茎や葉を捩じながら取ると根元から取り除くことができます。

葉組み

葉数が多いほど花数も増えるため、秋に葉が伸び始めるころから「葉組み」という作業を行って、葉数を増やします。

葉組みは球根や下部の葉を陰にしてしまう葉を株の外側へと移動させる作業で、外側の葉から順に中央に向かって渦巻き状に組み替えていきます。

葉組みをすることで、球根中央に光が入り新しい葉がでるようにしつつ、全ての葉に良く陽が当たるようになります。

シクラメンの病害虫

害虫として「ホコリダ二」「ハマキムシ」、病気として「灰色病」「軟腐病」などが発生することがあります。

害虫

「ホコリダ二」
高温乾燥も環境で発生しやすく、新芽などの成長点周辺を吸汁加害するため被害が酷いと葉が変形したり生育がとまります。

特に夏越しの株などで発生しやすいため、生育期に入る少し前(8月下旬あたり)から球根や芽の周りなどを消毒すると発生を抑えられます。

「ハマキムシ」
ハマキガの幼虫で葉を巻き取って内側から食害します。発生時期は春から秋までなので、10月あたりからガーデンシクラメンを植えた場合や翌春の4月あたりに発生することがあります。

葉を巻き取るため見た目が悪くなり、また幼虫は巻き取った葉の内側にいるため浸透移行性の薬剤でなければ退治しにくいので、見つけ次第葉ごと除去・捕殺します。

病気

「灰色かび病」
低温環境で多湿の場合に発生しやすく、咲き終わった花柄や枯れた葉に発生します。

初期は葉柄や花茎に水浸状の被害でて、後に灰色~灰褐色のカビして周辺に伝播していくため、花柄や枯れ葉は早めに除去して発生を抑えます。

「軟腐病」
高温の多湿環境で発生し、暖房の効いている部屋で球根周辺が湿った状態が続くと発生しやすくなります。

室内管理中は風通しの悪くなりやすいので、球根が濡れないような管理を心掛けて発生を抑えます。

退治・治療方法

各病害虫が発生してしまった場合は、市販の薬剤またはスプレー剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

ただし軟腐病の場合は枯死することが多いので、他の植物に伝播する前に早めに破棄した方が良いです。

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