ビオラの育て方

ビオラの基本情報

科名:スミレ科 Violaceae
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属名:スミレ属(ヴィオラ属)
   Viola
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学名: Viola × wittrockiana
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英名:Viola
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原産:ヨーロッパ
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開花時期:11月~5月
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高さ:10~50㎝
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耐暑性:弱い
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耐寒性:やや強い
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ビオラの特徴

ビオラは小輪の花が絶えず咲き続け、パンジーとともに冬~春花壇の代表的な花です。

花色は黄、橙、赤、青、紫、白、各色の複色、花の中央にブロッチと呼ばれる黒い模様など幅広いですが、近年では黒花や茶系の花色やウサギのような花形なども増え花色・花形のバリエーションもさらに豊富になっています。

サンショクスミレ(Viola tricolor)やマウンテンパンジー(Viola lutea)などのヨーロッパや近東に自生するスミレ属を交配して作られ、もともとは冬の寒さと夜の長さを引き金に春に開花する花でしたが、現在多くのパンジーやビオラはこの性質を弱めて秋から春まで開花する花になっています。

流通しているビオラには、ただ「ビオラ」として流通している一年草のものと、「宿根ビオラ」として流通している多年草のものがありますが、ここでは一年草のビオラを説明しています。

「ビオラ」「パンジー」の違い

「ビオラ」と「パンジー」の違いは花の大きさです。

園芸植物として流通するスミレ属の交配種のうち花が大き目のものを「パンジー」、小さめのものを「ビオラ」と呼び分けています。

上記のようにパンジーやビオラはヨーロッパから近東のスミレ属の仲間を交配(スミレ属メラニウム節内の交配)させて生み出されました。

そして学名はどちらも「Viola × wittrockiana」で、植物として二つの種類の違いはありません。

植物としての違いはほぼないため、ビオラとパンジーの生育サイクルや育て方などはほぼ同じです。

ただ花の大きさの違いからパンジーの方が華やかに見えるのに対して、ビオラの方は小輪のため開花ペース、冬場の開花しやすさなど開花量はパンジーより勝ります。

「小輪花=ビオラ」と「大輪花=パンジー」でしたが、現在は品種改良の結果「小輪系のパンジー」や「大輪系のビオラ」なども作られており呼び分けが難しくなっています。

「ビオラ」「スミレ」の違い

春先に野原で咲く紫のスミレ(菫)の花は、学名ではビオラ・マンジュリカ(Viola mandshurica)

一方で店頭で販売されているビオラに「○○スミレ」という名が付いていたりと、ビオラなのかスミレなのか悩む名前も多く見かけます。

同じ「ビオラ(=ヴィオラ)」という名があるのに、一方は秋から春まで咲く一年草で、もう一方は春だけ咲く宿根草(多年草)と性質が全く違います。

よく似た二つの花の違いの答えは、スミレは「植物名でありスミレ属の野生種の一つ」、ビオラは「スミレ属(=ビオラ属)をもとにした栽培植物の園芸上の名前」、大雑把にいうと「種類が違う」という当たり前の答えになります。

ビオラ、パンジー、スミレを含むスミレ属の植物は北半球の温帯域に500~600種ほどあるそうです。

それら原種には日本にも自生しているスミレのような多年草の種類もあれば、ヨーロッパ原産のサンショクスミレ(Viola tricolor)のような一年草も含まれます。

サンショクスミレに加えてマウンテンパンジー(V. lutea)やビオラ・アルタイカ(Valtaica)などのヨーロッパや近東原産のスミレ属を交配して「Viola × wittrockiana」=「パンジー・ビオラ」と分類される交配種群を生み出したようです。

この交配種群のうち花が大きい種類を「パンジー」花が小さい種類を「ビオラ」と園芸的に呼んでいます。

最近ではヨーロッパ原産の多年生のビオラの種類、ビオラ・ラブラドリカ(Viola labradorica)などが「宿根ビオラ」として流通しています。

「エディブルフラワー」としてのビオラ

ビオラはパンジーと同じく「エディブルフラワー(edible flower=食用にできる花)」としても知られており、新鮮な花をサラダなど食用に使えます。

パンジーやビオラのもとになっているサンショクスミレ(Viola tricolor)はハーブとして「ハートシーズ(heartsease)」という名でも知られています。そのためパンジーやビオラも育て方によってハーブの一種として利用できます。

ただし通常流通しているビオラは観賞用に育てられていることがほとんどで、消毒なども含め食用を想定していません。

もしエディブルフラワーとして利用したい場合は、自宅で種から育てるか、ハーブまたは食用として販売されているビオラを利用すると良いです。

ビオラの管理/置き場所

置き場所は陽当たりや風通りよく、排水の良い環境で育てて下さい。

ビオラは耐寒性一年草で、初秋~晩春まで生育し夏の高温多湿で枯死します。

寒冷地などで夏場に涼しい環境であれば、夏を越すという話しもありますが、多くの地域で一年草として育てます。

開花期は11月~5月で、寒さで開花量は異なりますが冬期も開花し続けます。

苗を選ぶ際に、株がグラグラと不安定な苗は根張りも悪いため避けます。

また徒長気味の苗を購入した場合や植え付け後徒長した場合は、伸びすぎている枝をピンチ(摘芯)を行います。

ただしピンチは寒冷期に行うと春まで開花しないことがあるので、晩秋以降に徒長した場合は翌春に刈り込みます。

ビオラの年間管理表
 
ビオラの植え替え

11月あたりから苗が出回ります。苗を購入後、一回り大きな鉢、または寄せ植えや花壇などに植え替えて下さい。

成長にともない株に対して鉢が小さくなるようであれば、随時植え替えを行い鉢のサイズを大きくしてください。

春先にもパンジーの苗が販売されています。開花期間が長いため流通期間も長いですが、購入した苗が根詰まり気味の場合もあります。

その際にはポットから外した鉢土の上部と底面を少し剥がし、根が張りやすくしてください。

ビオラの用土の選び方

市販の花や野菜用の培養土でも大丈夫です。土の過湿が続くことを嫌うため排水の良い用土で植えます。

またブレンドする場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3の土に植え替えもできます。

庭や花壇に植える場合は、土を排水良くしておくと良いです。完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けてください。

ビオラの水やり

ビオラの水やりは一般的な花の水の与え方に準じます。

鉢植えの場合は基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えてください。

庭植えの場合は、植えた直後にたっぷりと水を与えた後は、おおむね雨まかせでも大丈夫です。

ビオラの肥料の与え方

ビオラは連続開花をするため比較的肥料が必要となります。

植えるときの元肥や開花中の追肥を与え、肥料切れがおきないようにします。

肥料を与える頻度はお持ちの肥料の説明に準じたほうが良いですが、鉢植えで置き肥を与えるなら月に1度は与えた方が良いと思います。

ビオラの手入れ
花摘み

販売されている苗は通常1~数個の花が咲いています。この花を苗を植え付けた時点で摘み取り、株や根の成長を促します。

特に11月上旬あたりで花壇に苗を植える場合は、花を摘み取ることで根も良く張り冬の開花が良くなります。

以降は随時咲き終わった花を花茎ごと株の付け根から折り取ります。

パンジーやビオラはセルフクリーニングという性質があり、開花後の花は下側へと移動し絶えず綺麗な花が観賞できますが、開花後の鞘を残すことで種が付き次第に開花しにくくなります。

切り戻し

植え付け時に花摘みと開花後の花摘み以外は基本的に作業はあまりありませんが、成長にまかせて育て続けると4月末あたりから伸びすぎた枝の付け根あたりに枯れ葉などが目立つようになります。

5月まで花・株ともにきれいな状態を保つために、3月上旬あたりで切り戻しを行って下さい。

ビオラの増やし方

ビオラは種まきで増やします。

種まき

種まきは市販の種か採種したものを使って種まきします。ただし採種した種の場合は親株と同じ花は咲かないことが多いのです。

採種をする場合は、花柄を摘み取らず種を育てます。

種の成熟を待って採種しますが、成熟した種は零れ落ちるので種の色が変わり始めたら茶漉し袋などを付けると良いです。

撒き時期:8月末~9月末あたりですが、目安としてヒガンバナが開花する気温が適期です。

種の撒き方:種を撒きに必要な資材として市販の種まき用土と育苗トレーまたはピートバンを準備し、用土を十分給水させてから種をばら撒きします。

発芽するまで明るい日陰で乾かないように管理し、発芽後に苗の生育にあわせて間引きしていきます。

間引きの際は土から引き抜くのではなく、ハサミなどで切ると周囲の根を傷めません。

本葉が3~4枚くらいでポットに植え替えます。ポットで苗を大きく育てた後に定植する際は根が回る前に植え替えします。

ビオラの病害虫

害虫として「アブラムシ」「ツマグロヒョウモン」、病気として「うどんこ病」などが発生することがあります。

害虫

「アブラムシ」は花裏や葉裏などから発生します。風通しが悪い場所や油粕などの窒素肥料過多で発生量が増えることがあるので、育てている環境の改善も行うと良いです。

「ツマグロヒョウモン」はヒョウモンチョウの一種で、幼虫がスミレの仲間を食害します。

幼虫は黒に赤の模様が入るイモムシで、棘状の突起があり見た目は毛虫のような姿です。

春先以降に幼虫が大きくなると目立つようになり、食害量も増えます。

病気

「うどんこ病」は葉の表面に白い粉のようなカビが発生します。

陽当たりが悪い場合、または風通しが悪い場所や株が茂りすぎて通風が悪くなると発生しやすくなります。

被害が酷くなると株の成長が著しく悪くなるので、消毒の前に環境改善を行った方が良いです。

退治・治療方法

「アブラムシ」「ツマグロヒョウモン(=アオムシ類またはケムシ類)」「うどんこ病」の退治には、市販の薬剤またはスプレータイプ剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

またアセフェートやクロアチニジンを含む浸透移行剤を撒くことで予防や退治ができます。

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