ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の育て方

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の基本情報

科名:ヤシ科 Arecaceae
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属名:ワシントンヤシ属(ワシントニア属)
   Washingtonia
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学名:Washingtonia filifera
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和名:ワシントンヤシ(ワシントン椰子)
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別名:シラガヤシ(白髪椰子)
   オキナヤシ(翁椰子)
   ロウジンヤシ(老人椰子)
   アメリカビロウ
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英名:Desert fan palm
   California fan palm
   California palm
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原産:アメリカ南西部~メキシコ北西部
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高さ:15m~20m
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耐暑性:強い
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耐寒性:やや強い
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ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の特徴

ワシントンヤシはアメリカ南西部~メキシコのバハ・カルフォルニア州にかけて自生するヤシ類で、手のひら状の大きなグリーンの葉と葉周りにできる白い繊維が特徴的です。

ワシントンヤシはヤシ類の中では耐暑性だけでなく耐寒性も高く(USDA hardiness zone 8a[~11]で耐寒性のおよその目安として-12.2~-9.4℃)庭木として植栽でき、街路樹やトロピカルな植栽に使われます。

ワシントンヤシ(Washingtonia filifera)の近縁種にワシントンヤシモドキ(オニジュロ=Washingtonia robusta)があり、成木状態でワシントンヤシよりやや幹が細く地際の基部が広がっています。

その他にワシントンヤシより若干成長が早く、一方でワシントンヤシよりやや耐寒性が劣る(USDA hardiness zone 9a[~11]で耐寒性のおよその目安として-6.7~-3.9℃)などの特徴もありますが、幼木期はほぼ見分けがつきません。

流通しているワシントンヤシの中にはワシントンヤシ・フィリバスタ(Washingtonia × filibusta)と呼ばれる2種間の交配種も含まれていることがあります。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の管理と置き場所

ワシントンヤシの仲間は陽当たりと風通りの良い環境で、排水性の良い場所で育てます。特に直射日光を好むため基本的に屋外管理します。

葉色が美しいので小型の株を室内の観葉植物として管理したくなりますが、室内で屋外直射日光ほどの光量を確保することができないため、葉色が悪くなり株の状態が著しく悪化することがあります。店舗などで屋内に置く場合でも極短期間にした方が良いです。

ワシントンヤシの仲間はいずれも成長は極めて遅いものの、最終的には樹高15~20m、幹幅がワシントンヤシで直径60㎝前後、ワシントンヤシモドキで直径40~50㎝まで育つので、庭へ定植する場合は予め周囲に十分空間がある場所を選んで植えた方が良いです。

比較的寒さに強く暖地・温暖地だけでなく一部寒冷地でも植栽できます。特に夜間でも車や人通りの多い市街地や海沿いの地域では霜が降りにくく積雪期間も短くなりがちなので植栽しやすくなります。

なお葉の上に雪が積もり葉が折れたりするので、降雪量の多い地域では冬期に幹上部を葉ごとコモでまき防寒した方が良いです。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の年間管理表

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の植え替え

ワシントンヤシの植え替えは、暖地であれば厳冬期と猛暑期以外の時期に行い、その他の地域であれば4月~7月・9月~10月に行います。

地植えの場合

極度に排水の悪い土質でない限り問題なく育ちます。ワシントンヤシの仲間は基本的に成長速度が遅めですが、固めの土質ではさらに遅く、柔らかめの土質ではやや早めに育ちます。

株の根回りの大きさにより掘る深さや大きさが変わりますが、早めに大きく育てたい場合はポット苗のような小さな株でも少なくとも直径・深さが30㎝~50㎝は掘り返した方が良いです。根鉢が20㎝以上ある場合は、根回りの大きさの2~3倍の広さに穴を掘った方が良いです。

掘り返した土に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けます。排水が悪い場合は盛り土にして植えるか、堆肥類以外に軽石小粒や山砂など砂質のものを混ぜて土質を改良します。

幹立ちの大きな株は専門業者に植え付け依頼をすることが多いですが、個人で植える場合は根付くまでの間に強風などで傾いたり根が切れることがあるので、支柱を立てて幹を固定します。

鉢植えの場合

地植よりもさらにゆっくり大きくしていきたい場合は鉢植えで育てた方が良いです。

一方でワシントンヤシは根が太く根詰まりが起きると鉢を割ることがあり、根詰まりの状態では葉の成長も悪くなり、葉長が短くなることもあるので、植え替えは2年に一度は行います。

なお植え替えは、作業ごとに一回り大きな鉢にサイズアップをしていき、最終的に鉢のサイズを大きくできなくなった時点で地植えに移行します。

またやや難易度が高くなりますが、幹幅が鉢幅以下の場合は土を崩し根を整理して同じ大きさの鉢に植え替えることもできます。

この場合は鉢から根鉢を抜き、土を落としつつ根を解し、根を間引くように切り取ったり根を先から少しずつ切り取るなどを行って根量を減らします。根に合わせて葉量も減らすため新芽から新しい順に2~3枚だけ葉を残し、それ以外の葉は基から切り落とします。

なお植え替えで根を傷めた場合は、根の活動が活発になるまでの間は葉長が短くなったり委縮したような葉がでます。また根の切り口から腐敗して株を損なうこともありえるので、根の活着を早めるような活力剤などを与え痛みを軽減させると良いです。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の用土の選び方

自生地ではオアシス周辺などの砂礫土壌の地域に自生していますが、排水が良ければ土質はあまり選びません。

ただ小さな苗を早く大きく育てたい場合は、砂質と腐植質などを混ぜ根が張りやすい土質に変えることで初期の成長速度を若干早めることができます。

庭・花壇植え

植えこむ周囲の土量に対して山砂、完熟堆肥を2~3割と完熟有機肥料を混ぜて植え付けます。

新築の庭で山砂や真砂土などが入っている場合は堆肥類を周囲に混ぜて植え付けます。

鉢植え

小さな苗の植え替えは赤玉土小粒:軽石小粒:鹿沼土小粒:腐葉土=4:2:2:2を混合した土に植え替えます。大きな株の植え替えであれば赤玉土小粒:腐葉土=7:3の混合用土でも育ちます。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の水やり

ワシントンヤシの仲間の水やりは一般的な樹木の水やりと同じです。

庭植え

根付いた株は基本的に水やりの必要はありませんが、定植した年は植えた直後にたっぷりと水を与え、表土の乾きを確認しつつ根付くまでの間は水やりを行います。

鉢植え

基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の肥料の与え方
鉢植えの場合

植え付け時に元肥として根を傷めない緩効性化成肥料を混ぜ込んで植え付け、追肥として5月~9月まで2ヵ月に1回、株元から離した株回りに緩効性の化成肥料か有機肥料を与えます。

地植の場合

植え付け時に堆肥類とともに元肥として根を傷めない緩効性化成肥料か完熟有機肥料を混ぜ込んで植え付け、以降追肥をほぼ必要ありません。

ただし地植えでも成長を早めたい場合は、鉢植えの場合と同じく追肥として5月~9月まで2ヵ月に1回、株元から離した株回りに緩効性の化成肥料か有機肥料を与えます。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の剪定

古い葉は役目を終えると枯れて、時間が立てば基部から枯れ落ちます。放置状態では枯れた葉は長期間にわたり幹に付いたままになるため、景観上枯れた葉は基部を残して切り落とします。

葉の基部は固いため一般的なハサミでは切ることが難しいので、小さな株では剪定バサミを使い、大きな株ではノコギリで切り落とします。

また葉柄に棘があるため、剪定作業をするときは固めの革手袋を着けたうえで作業した方が良いです。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の増やし方

ワシントンヤシは種まきで増やします。ヤシ類の種まきは数か月~半年以上かかることもあり、以下に一般的な「ポット撒き」と発芽まで場所をとらない「袋撒き」について説明します。

ポット撒き

時期は5月~9月に行います。果実から種を採りだし洗浄して果肉を洗い落とします。

ポットや鉢に赤玉土小粒、鹿沼土小粒、バーミキュライトなどのカビ類の発生しにくい用土を入れ、種を土中に埋め込みます。

十分水を与えた後、暖かい場所に置き乾かないように定期的に水を与えるか、衣装ケースなどに入れて発芽まで乾きにくくします。

袋撒き

ジップロックなどの開閉しやすい袋や中身が確認しやすい透明タッパーのような容器に種を入れ発芽までの管理をする種の撒き方です。

ポット撒きと同じく果肉を洗い落として種を準備し、赤玉土小粒、鹿沼土小粒、バーミキュライトなどのカビ類の発生しにくい用土を湿らせたうえで袋やタッパーに入れ、種を土中に埋め込みます。

暖かいところに置いて、外部から種の発芽状況を確認し、発芽した種から順に取り出してポットや鉢に植え替えます。

ワシントンヤシ(ワシントンパーム)の病害虫
害虫

病害虫被害は少ないですが「ハダニ」「カイガラムシ」が発生することがあります。

「ハダニ」は乾燥する環境下で葉裏にから広がっていき、葉裏から吸汁するため、葉色がかすれた様な色合いになります。鉢栽培で軒下など雨があたりにくい環境で発生しやすくなります。

またハダニはクモの仲間なので、大発生すると蜘蛛の巣状の糸を張り始めます。

水を嫌うため葉裏から株全体を濡らして弱らせ、消毒することで退治できます。

「カイガラムシ」は葉裏・葉柄・葉の付け根などに発生します。被害が酷くなると葉が黒く汚れる「すす病」を併発することがあるため注意が必要です。風通しの悪い環境や日照量が足りない場所で発生しやすくなります。

「ハダニ」「カイガラムシ」が発生した場合は、市販のスプレータイプの薬剤で「樹木類」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

また樹高が1m以下の場合、殺虫用の浸透移行性の粒剤を撒くことで予防や退治をすることができます。

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