ナツフジ(夏藤)の育て方

ナツフジ(夏藤)の基本情報

科名:マメ科 Fabaceae
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属名:フジ属 Wisteria
(またはナツフジ属 Millettia)
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学名:Wisteria japonica
   Millettia japonica
   Wisteriopsis japonica
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和名:ナツフジ (夏藤)
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別名:ドヨウフジ(土用藤)
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原産:日本(関東地方南部以西)・朝鮮半島
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開花時期:7月~8月
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高さ(樹の長さ):~6m
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耐暑性:強い
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耐寒性:やや強い
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ナツフジ(夏藤)の特徴

ナツフジ(夏藤)は、関東南部以西の本州、四国、九州の山林地に自生するツル性の落葉樹で、7月~8月に乳白色~淡黄色の藤に似た花を咲かせます。

「夏藤」の名は藤のような花を夏に咲かせることが由来で、別名で「ドヨウフジ(土用藤)」という名前もあります。

フジ(藤=Wisteria floribunda)と同じフジ属(Wisteria)に分類されたり、ナツフジ属(Millettia)として別属に分類されるなど採用される正名は植物園などで異なりますが、フジの近い種ではあるためフジより全体的に小ぶりなものの花・葉・樹形はフジに似た姿です。

ナツフジのツルの巻き方はフジと逆(ヤマフジと同じ巻き方)で、ツルを上方(伸びていく方向側)から見た場合にツルが左巻きに育ち、フジやヤマフジより枝が全体的に細いです。

また自生環境でのナツフジは、他の樹木に巻き付いてよじ登り他の樹木を覆うように育ちますが、フジやヤマフジのように高木を覆うほどは伸長せず、成長しても中木の高さまでです。

花壇や庭園の植栽する機会は少ないものの、盆栽仕立てなどの鉢栽培として昔から楽しまれています。

以下にナツフジの育て方を鉢栽培を主に説明しますが、地植えでの管理は基本的にフジと同じなので下記リンク先を参照して下さい。

ナツフジ(夏藤)の管理/置き場所

ナツフジ(夏藤)は陽当たり、風通し、排水性の良い環境で育てます。

また山林の植物のため、砂質のような排水性ではなく腐植質を含み適度な保水性も必要です。

花房はフジほど下垂しないものの湾曲しながら垂れ下がって咲くので、支柱などで枝が硬く充実するまで支えるか、行灯仕立てツルを巻き付けます。

置き場所は直射日光が良く当たる場所で育てます。自然状態では他の樹木にツルを絡めてよじ登り、他の樹木を超えて日の当たる場所に花が咲き、日の当たらない部分は開花しません。

ナツフジ(夏藤)の年間管理表
 
ナツフジ(夏藤)の植え替え

植え替えは春の芽吹き始めに行います。

植え替え時期は目安として3月~4月で、地域によって芽吹く時期が変わりますが、芽吹く少し前か芽吹いたあたりが植え替え適期です。

ナツフジはフジの仲間と同じく根を傷めるまたは植え替えを嫌う植物と言われ、根は太い根から細い根が多数のびるような作りになっています。

そのため水を吸うべき細い根は切れやすく、他の植物のように根を解すと太い根だけ残して土と一緒に細い根を失うことがあります。

植え替えに不安がある場合は、根を切らないように植え替えを行うと良いです。

鉢植え

成長にともない株に対して鉢が小さくなるようであれば、適宜植え替えを行い鉢のサイズを大きくします。

先述の通り細い根は切れやすいので、バケツなどに水をいれ根鉢を漬け、竹串など細い棒状のもので突きつつ水中で細根がとれないように丁寧に土を落とします。

根詰まりしている株の場合は、土を落とし終った後に、新しく根が伸ばす場所を作るため細根の先端を少しずつ剪定し、植え替え用土と同じもので植え替えます。

乾いた植え替え用土では根から水分を奪って傷めるので、軽く湿らせておくと良いです。

庭植え

株の根回りの大きさにより掘る深さや大きさが変わります。

およその目安で、根回りの大きさの2~3倍の広さに穴を掘り、掘り返した土に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けて下さい。

また上記のような理由で根と株を傷めることがあるため、地植えの株の移植は極力避けます。

もし移植しなければならない場合は、特に太い根と周囲の土を全て掘りあげられるように大きく深く掘り起こす必要があります。

ナツフジ(夏藤)の用土の選び方

鉢植えの場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3を混合した土、または赤玉土小粒:黒土:鹿沼土小粒:腐葉土=3:3:2:2に植え替えます。

市販の花や野菜用の培養土で育たないわけではないですが、植え付け初期は土の過湿ぎみになるため根腐れを起こすことがありますので避けた方が良いです。

庭や花壇に植える場合は、完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けます。

ナツフジ(夏藤)の水やり

ナツフジの水やりは一般的な樹木の水の与え方に準じますが、自然状態は周囲に樹木があり土や根が乾ききるということがないため水枯れを嫌います。

特に夏の水枯れで開花できなくなる場合があるため注意が必要です。

鉢植え

年間を通して鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

特に夏場は根の張り具合によっては1日1~2回水やりが必要になることがあります。

庭植え

概ね天候に任せた水やりとなりますが、植えた時期から一年間は土の状態を見つつ水を与えます。

また夏は地植えであっても乾きやすくなるため、表土が乾く場合は夕方にたっぷりと水を与えます。

ナツフジ(夏藤)の肥料の与え方

ナツフジは肥料を与えすぎると枝の生育が良くなるものの花が咲かなくなることがあるため多肥に注意しつつ施します。

鉢植え

植えるときに根を傷めないような緩効性化成肥料または完熟の有機肥料を元肥として少量だけ用土に混ぜ込みます。

以降は追肥として開花後の9月あたりに、緩効性の化成肥料か有機肥料を株元から離した場所に少量与えます。

また植え替えを行っていない場合は4月あたりも芽吹きのための追肥を少量与えます。

地植え

植えて数年経った株やある程度育った樹の場合は、1月~2月の間に寒肥を施します。

樹の周囲(樹冠の真下あたり)の土を掘り返し、完熟堆肥や完熟肥料を混ぜ込みます。

この際に土と一緒に細根も切ることで、新根の発生も促すようにしますが、太い根を切らないように気を付けます。

地植えの場合は追肥は特に必要ありません。

ナツフジ(夏藤)の手入れ
剪定

ナツフジの剪定は開花後~冬に行います。

特に鉢栽培でコンパクトに育てる場合は開花後の枝(あるいは冬であれば前年枝)を基部数芽を残して切り取ります。

ナツフジ(夏藤)の増やし方

ナツフジ(夏藤)は種まき、挿し木で増やします。

種まき

種まきの時期は3月~4月です。開花後に花を切らずに残すとマメのような鞘ができ中に種ができ、秋から冬に実が熟すと鞘が変色します。

鞘のままか鞘から種を取り出して、すぐに種まきをするか、撒き時期まで保管して種まきします。なお秋に種まきした場合でも、発芽は翌3~4月あたりになります。

植え替えに使うものと同じ用土をポットに入れて、1粒ずつ種を埋め込み、たっぷりと水を与えます。

挿し木

時期は6月~7月上旬あたりに行います。その年に伸びた枝(新梢)から挿し穂を作ります。

また挿し穂に使う枝は新梢全体ではなく、未熟な先端部分を除いて固く充実した枝を使います。

葉が3枚毎に枝をカットし、良く切れるカッターやナイフで下側切り口を給水しやすいように斜めに切ります。

その後挿し穂を数時間水につけて給水させます。挿し穂の一番下の葉を取り除き、残った2枚の葉は、蒸散を抑えるため半分まで切ります。

鹿沼土細粒か赤玉土細粒のような清潔な土を準備し、水をかけて湿らせた後、挿し穂を土に挿します。

発根剤などを使うと成功率が上がるのでお勧めです。ビニールなどで覆い保湿しつつ、日陰で水を与えながら管理します。

ナツフジ(夏藤)の病害虫

害虫として「ドクガ」「マメドクガ」「ミノガ(ミノムシ)」、病気として「こぶ病」などが発生します。などが発生します。

害虫

「ドクガ」「マメドクガ」はガの幼虫で、6月~9月に幼虫が葉を食害します。

また有毒のケムシ類なので、発生時期に不用意に枝葉を触らないように注意が必要です。

「ミノガ」の幼虫であるミノムシにより、葉が食害され、やがてミノを作るために枝を切り取られます。

夏の終わりくらいから小さな幼虫が葉裏から食害を始めるので、葉があるうちに消毒することで幼虫が大きくなる前に退治できます。

病気

「こぶ病」は、枝や幹に小さな突起状のこぶができ、こぶはやがて大きくなり生育に影響を与えます。

こぶ内部は腐敗しやすく被害が酷い場合はこぶ周辺やこぶより上方の枝葉は萎凋や枯死します。

剪定することで風通しを良くし発生を抑えることができます。

退治・治療方法

「ドクガ」「マメドクガ」「ミノガ」は「樹木類」の登録と該当害虫が登録されている薬品または「ケムシ類」の登録がある薬品を散布することで防除できます。

「こぶ病」はこぶとこぶの接している部分も削り取り殺菌剤を塗布するか、殺菌癒合剤を塗布します。

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