ヒナゲシ(雛芥子・雛罌粟)の育て方

 ヒナゲシの基本情報

科名:ケシ科 Papaveraceae
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属名:ケシ属 Papaver
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学名: Papaver rhoeas
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和名:ヒナゲシ(雛芥子、雛罌粟)
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別名:シャーレ―ポピー、クビジンソウ(虞美人草)、コクリコ(フランス語の Coquelicot から)
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英名:Shirley poppy(ヒナゲシの園芸品種群)
英名:Common poppy, Corn poppy(ヒナゲシの野生種)
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原産:ヨーロッパ中部
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開花時期:4月中旬~7月中旬
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高さ:15㎝~1m
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耐暑性:弱い
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耐寒性:強い
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 ヒナゲシの特徴

ヒナゲシ(雛芥子・雛罌粟)はやや皺のある薄く柔らかい花弁が特徴で、オリエンタルポピー(オニゲシ)などの比較的しっかりとした花弁とは違う和紙の薄紙で作った紙細工のような花が魅力の一年草のポピーです。

他のポピーと同じく移植を嫌いますが基本的な性質は強く、自生地のヨーロッパでは畑の雑草扱いされるほど繁殖力の強い植物です。日本でも陽当たりと排水の良い環境ではこぼれ種で育つことがあります。

シベリアヒナゲシ(アイスランドポピー)と花の質感や咲き方などが似ていますが、シベリアヒナゲシは一つの花茎に一輪の花が開花するのに対して、ヒナゲシは一つの花茎に数輪の花が開花し、伸びた茎にも葉が付いているという特徴もあります。

またシベリアヒナゲシの花色は白、黄色、クリーム、オレンジ、ピンクなどに対して、ヒナゲシは白、ピンク、赤などの赤系統の花色です。

なおケシ(Papaver somniferum)の仲間ですが、麻薬成分は含まれておらず園芸植物として問題なく育てることができます。

 ヒナゲシの名前

ヒナゲシの別名に「コクリコ」「虞美人草」「シャーレ―ポピー」「コモンポピー」や単に「ポピー」と呼ばれることもあります。

コクリコ
映画のタイトルでも聞き覚えのある「コクリコ」の名はフランス語でヒナゲシを指す「Coquelicot」に由来します。またフランス国旗の赤はヒナゲシを表し、他の青=矢車草、白=マーガレットとともに国花の一つでもあります。

コモンポピー
英名の「common poppy」に由来し野生種のヒナゲシに対して使われる名です。その他にも「corn poppy」「field poppy」などがあり、麦やトウモロコシ畑の雑草として一般的に見られることを伺わせる名前です。

シャーレーポピー
英名の「Shirley poppy」に由来し、シャーレ―ポピーやシャーレィポピーなどと呼ばれます。野生種のヒナゲシを元に観賞用に改良された栽培品種群をさします。

虞美人草(グビジンソウ)
中国の伝説が由来で、三国志で有名な秦代末の武将の項羽の愛人「虞」がもとになっています。伝説の内容は、項羽は楚漢戦争の最後の戦いで劉邦に敗れ垓下という地まで追いつめられる。死を覚悟した項羽が愛人である虞を思い詠った歌に合わせて舞い、その後虞美人は自害したが、虞を葬った墓に翌年赤いヒナゲシが咲いた、というものです。

 ヒナゲシの管理/置き場所

ヒナゲシは耐寒性の一年草で、暑さや蒸れに弱いため暖かい地域では秋に種をまき春に花を咲かせる一年草、寒い地域では春に種を撒き夏前まで花を咲かせる一年草として育てます。

育てる環境は、陽当たりや風通りよく、排水の良い環境で育てて下さい。特に土の過湿は苦手なので排水の良い環境が重要になります。

 ヒナゲシ年間管理表
 ヒナゲシ植え替え

11月~12月あたりから苗が出回り、春先にも開花苗が流通します。苗を購入後、一~二回りの大きな鉢、または寄せ植えや花壇などに植え替えます。

ヒナゲシをはじめケシの仲間は直根性(根が下方に真っすぐ伸びる性質)で植え替え等で根を傷めることを嫌うため、根鉢やポットの土を崩さずに植え替えます。また種から育てる場合は、最初から観賞時に使う鉢やプランターに直撒きもできます。

 ヒナゲシ用土の選び方

市販の花や野菜用の培養土でも大丈夫です。土の過湿が続くことを嫌うため排水の良い用土で植えてください。根腐れが気になる場合は、市販の培養土に赤玉土小粒や軽石小粒などを1~2割まぜて排水を良くしたものを使うこともできます。

またブレンドする場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3の土に植え替えもできます。

庭や花壇へ植え付ける場合は、排水性を良くするために完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、腐葉土、完熟有機肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けてください。

 ヒナゲシ水やり

ヒナゲシの水やりは一般的な花の水の与え方に準じます。

鉢植えの場合は基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えてください。

庭植えの場合は、植えた直後にたっぷりと水を与えた後は、おおむね雨まかせでも大丈夫です。

 ヒナゲシ肥料の与え方

ヒナゲシは肥料を多く与えすぎると徒長して倒れやすくなったり、病害虫が発生しやすくなるため少量の肥料で育てます。

庭植えの場合:種を花壇などに直撒きする場合は、予め有機肥料などを元肥として混ぜ込んでから種まきします。苗を定植する場合は、定植するまでに元肥を混ぜ込んでから植え付けます。

鉢植えの場合:庭植えと同じく植え替え時に元肥を混ぜて植え付けます。鉢植えの場合は肥料が切れることがあるため、翌春に蕾が大きくなったあたりに追肥として株の周囲に追肥を与えます。与える肥料の量は、お持ちの肥料の説明に準じます。

 ヒナゲシ増やし方

ヒナゲシは種まきで増やします。種は購入するか採種したものを撒くことになります。

種まきは暖かい地域では9月末~10月、寒い地域では3月~4月が適期です。

ケシの仲間は直根性で移植を嫌うため、種を撒く場合は、庭や観賞時使う鉢やプランターに直撒きするか、ビニールポットで苗を育てます。

種は「芥子粒」の言葉通り極めて小さく、好光性種子(明るい環境下で発芽する種子)のため覆土はしません。

庭・花壇への直撒き:酸性土壌を嫌うため苦土石灰を撒き中和します。苦土石灰を撒いて耕し土壌混入して水を撒き、1~2週間おきます。さらに完熟の牛糞堆肥や馬糞堆肥、肥料などを植えこむ周囲に混ぜてから植え付けてください。もし完熟に達していない堆肥や有機肥料を混ぜる場合は、土に混入後さらに1~2週間おいてから種まきします。

土の準備ができたら、種をばら撒きまたは筋撒きします。もしばら撒きで雑草との区別がつかなくなる恐れがある場合は、筋蒔きにすることで発芽箇所に規則性ができ区別しやすくなります。

種が小さく水やりなどで流されやすいため、種まきの前にたっぷりと土に水を染み込ませます。種まき後に土表面を軽く押さえ、種と土が密着させた後、再度地表全体に水を与えます。なお地表の乾燥が不安な場合は、バーミキュライト小粒を極少量だけ種の上に被せることもできます。

発芽後本葉が出たあたりで間引きします。根が傷むのを嫌うため、間引きの際は土から引き抜くのではなくハサミなどで切ると周囲の根を傷めません。間引きは葉が重なるくらいに育ったあたりで随時行い、最終的な株間が15㎝前後までは行った方が良いです。

ポット撒き:ビニールポットに培養土を入れ、水をかけて土を湿らせます。軽く土を押さえて種と土を密着させ、再度軽く水を与えます。直撒きと同じく土表面の乾きが不安な場合は、バーミキュライト小粒を種の上に極少量被せることができます。

発芽後は直撒きと同様に間引きを行い、1ポットに1苗になるまで間引きつつ育成します。

なおポットで育てた場合の注意点として、直根性のためポット内で育ちすぎると、ポットから移植しても大きく育たなくなります。ある程度育てた段階で定植してください。

 ヒナゲシ病害虫

ヒナゲシには害虫として「アブラムシ」「コナジラミ」「ハダニ」、病気として「うどんこ病」などが発生することがあります。

「アブラムシ」は花裏や葉裏などから発生します。風通しが悪い場所や油粕などの窒素肥料過多で発生量が増えることがあるので、育てている環境の改善も行うと良いです。

「コナジラミ」「ハダニ」はともに葉裏に発生し、葉裏から吸汁する害虫です。どちらの害虫も発生初期で吸汁により葉色が悪くなります。

コナジラミは白く小さな成虫が飛び回るようになって気づくことがあります。またハダニは被害が酷くなると、葉の周囲に蜘蛛の巣状の糸を張り巡らせます。陽当たりや場所や風通しが悪い場所で大発生しやすいためアブラムシと同じく環境改善も行うと良いです。

「うどんこ病」は葉の表面に白い粉のようなカビが発生します。陽当たりが悪い場合、または風通しが悪い場所や株が茂りすぎて通風が悪くなると発生しやすくなります。被害が酷くなると株の成長が著しく悪くなるので、消毒の前に環境改善を行ってください。

「アブラムシ」「コナジラミ」「ハダニ」「うどんこ病」が発生してしまった場合は、市販のスプレータイプの薬剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

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