シマオオタニワタリ/アスプレニウムの育て方

 シマオオタニワタリ/アスプレニウムの基本情報

科名:チャセンシダ科 Aspleniaceae
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属名:チャセンシダ属(アスプレニウム属)Asplenium
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学名:Asplenium nidus
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和名:シマオオタニワタリ(島大谷渡)
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英名:Bird’s-nest fern, Nest fern
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原産:熱帯アジア、オーストラリア、インド、東アフリカなど熱帯地域と各諸島
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株幅:~2m
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耐暑性:強い
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耐寒性:弱い
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 シマオオタニワタリ/アスプレニウムの特徴

シマオオタニワタリは熱帯アジアやオーストラリア、インド、東アフリカなどの沿岸地域や各島々に自生している大型のシダ植物で、自生地では樹上に着生しているか半地生しています。

近縁種のオオタニワタリ(大谷渡=Asplenium antiquum)とともにタニワタリと呼ばれたり、混同してオオタニワタリと呼ばれることがありますが、店頭に並ぶものは園芸種もあるシマオオタニワタリであることがほとんどです。

また属名の「Asplenium」から他の種類とともに「アスプレニウム」と呼ばれたり、学名そのままに「アスプレニウム・ニドゥス」の名で店頭に並ぶこともあります。

日本にも沖縄本島や奄美群島に自生しており、野生の個体についてはシマオオタニワタリは環境省レッドリストの準絶滅危惧種(NT)、近縁種のオオタニワタリとともに絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。

 食用としてのシマオオタニワタリ

シダ類には山菜のワラビのように新芽を食用にするものがありますが、シマオオタニワタリも近縁種のヤエヤマオオタニワタリ(八重山大谷渡=A. setoi)とともに新芽を食用にされます。

とくに台湾では食用にシマオオタニワタリが栽培されているそうです。

一般にアスプレニウムとして流通しているシマオオタニワタリも食べられないわけではないですが、食用として栽培されたわけではないので注意が必要です。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム管理・置き場所

シマオオタニワタリやアスプレニウムの仲間は樹上生活のため比較的耐陰性もあり室内観葉植物として育てることもできますが、本来は木漏れ日のような明るい日陰や風通りよい場所の方が健康的な株に育ちます。

理想の管理は春から秋まで屋外管理し、冬期(最低気温が8℃~10℃)は室内に取り込む管理が良いですが、居住環境により同じ育て方ができないことがあるので「通年室内管理」「屋外(戸建て)」「屋外管理(ベランダ)」に分けて説明します。

通年室内管理
通年室内管理する場合は極力明るさを確保することが重要になります。また乾燥した風にさらされ続けることを嫌うので、エアコンからの直接風が当たらない場所にします。

室内に陽が入る秋から春までの時期は、南側の窓辺のような窓越しの直射光が入る場所のレースのカーテン越しのような明るさが良いです。

室内の明るさは、陽が高くなる夏場に暗くなる傾向があります。夏場は朝日から数時間陽が当たるような東向きの窓辺などに置くと良いです。朝日であれば葉焼けは起きにくいですが、陽が高くなり日差しが強くなると葉焼けが起きるので、レースのカーテン越しや遮光をした方が良いです。

屋外管理(戸建て)
暖かくなる4月~5月から屋外に出せます。暖地では3月末から屋外に出すこともできます。

置き場所は、水やりの手間を減らす意味でも雨ざらしにできる場所が良いです。屋外管理の場合は連日雨が降っても根腐れしません。明るい日陰が良いので、常緑樹よりは比較的木陰が明るい落葉樹の下などが良いです。

雨は当たらなくなるものの、直射日光が当たらない明るい軒下で育てることもできます。ただしこの場合は乾燥によるハダニの発生も考えられるので、株全体に水をかけることが重要です。

気温が下がる10月あたりから室内に取り込みます。取り込みは夜間の最低気温が10℃近くになる時期を目安にすると良いです。以降は通年室内管理と同じく室内の明るい場所で越冬させます。

屋外管理(ベランダ)
暖かくなる4月~5月から屋外に出せます。暖地では3月末から屋外に出すこともできます。

ベランダの東西南北の向きで明るさに違いがでるため、北側ベランダだけは南向きの別の屋外に置いた方が良いです。

またベランダの外側の仕切りが柵かコンクリートの壁かによって、明るさと風通しも変わります。コンクリートの壁の場合は鉢下に台を置いて高さを出すことによって、風通しと明るさを改善できます。

南向きのベランダの場合、真夏はほぼ直射日光が当たりませんが、春と秋はベランダ内に光が入り葉焼けが起きることがあります。ベランダ内の置き場所や他の植物との配置を工夫して日陰を作るか遮光ネットで光を弱めた方が良いです。

西向きベランダは、夏の夜間の温度が高くなるため陽が落ちたあたりで打ち水をすると温度を下げることができ植物が弱りにくくなります。

ベランダは概ね雨は当たらないため、乾燥によるハダニの発生も考えられるので株全体に水をかけることが重要です。

気温が下がる10月あたりから室内に取り込みます。取り込みは夜間の最低気温が10℃近くになる時期を目安にすると良いです。以降は通年室内管理と同じく室内の明るい場所で越冬させます。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム年間管理表
 シマオオタニワタリ/アスプレニウム植え替え

植え替えは5月~8月に行い、2年に1回くらいの頻度で植え替えた方が良いです。

アスプレニウムの根は土に絡みつくような張り、健康的な株では鉢土表面に細かな根が張り、土が崩せない状態になっていることがあります。

竹串や棒などを使い土を突き崩しつつ、鉢土を半分から1/3まで解し、一回り大きな鉢へ植え替えます。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム用土の選び方

保水と通水の良いベラボンのようなヤシ繊維の植え込み材やミズゴケで植え替えができます。市販の観葉植物用の培養土でも大丈夫です。

またブレンドする場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3の土に植え替えもできます。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム水やり

シマオオタニワタリは大きな葉を放射状に広げ、中心が窪んだ器のような株姿をしています。自生している状態では、落ち葉などの上から落ちてくる有機物や雨水を中心に集める作りになっています。大きく育つと茎のように立ち上がりますが、茎のように見える部分にも多くの根をあることが特徴です。

最低気温が15℃以上になる晩春あたりから生育し始めます。生育期間中の水やりは基本的には鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと水を与えますが、高温期は株全体を濡らすように水をかけつつ鉢内にも水を与えるようにするとより良いです。

特に夏期は生育が活発で、一日に数回の水やりでも根腐れすることはありません。

晩秋~初春で最低気温が15℃をきるあたりから水やりの頻度を減らし、鉢の表土が乾いたら水を与えるようにします。最低気温が8~10℃またはそれ以下になる冬期はさらに水やり頻度を減らし、表土が乾いて3日~5日後に水を与えるようにします。

晩秋~初春は水やりの頻度は落ちますが、葉水は定期的に行い空中湿度と葉の乾燥を防ぐようにします。

各管理場所での注意点を以下に説明します。

通年室内管理
一般的には季節に応じて気温が変わるため、上記の通り季節ごとに水やりの頻度が変わりますが、室内管理の場合は住居の気密性と空調の性能により季節とは異なる水管理になることがあります。

最低気温が15℃以上の場合は、鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと水を与えます。最低気温が8~10℃またはそれ以下になる冬期はさらに水やり頻度を減らし、表土が乾いて3日~5日後に水を与えるようにします。

年間通して葉水を与えた方が良いですが、室内では株全体をシャワーで濡らすことが難しいため、暖かい時期であれば一時的に屋外に出して全体に水をかけ、寒い時期であれば屋内管理のまま霧吹きなどで株全体を濡らすと良いです。

屋外管理(戸建て)
基本的な水やりは鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと与えます。雨ざらしの場所に置くと管理は大幅に楽になり、高温期であれば毎日雨が降っても根腐れすることはありません。

軒下に置いている場合は雨があたらないため、高温期はほぼ毎日株全体を濡らすように水を与えます。

屋外管理(ベランダ)
基本的な水やりは鉢土の表面が乾いたら鉢下から水がでるくらいにたっぷりと与えます。屋外管理の軒下と同じく雨があたらないため、株全体を濡らすように水を与えます。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム肥料の与え方

肥料を与えなくても育ちますが、少量でも肥料をあたえることで生育が早くなり葉色も良くなります。

肥料を与える場合は生育期の5月~10月に、緩効性の化成肥料を置き肥として2~3ヵ月に1回の頻度で与えるか、薄めた液体肥料を月に数度与えます。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウムの剪定

アスプレニウムの仲間は定期的な剪定は必要ありませんが、成長に伴い株の下側の葉が傷んだり枯れていきます。見た目の良い状態を維持するために枯れた葉や傷んだ葉を適宜切り取ります。

少量の痛みが出ている葉を1枚丸ごと切り落とすと生育に影響するため、傷んでいる部分が少ない場合は傷んでいるところだけを切り取ると良いです。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム増やし方

シマオオタニワタリはシダ植物のため種はできませんが、葉裏にできる胞子を使って増やすことができます。

胞子撒き:時期は5月~9月に行います。水苔や調整ピートモスなどを湯通しして殺菌するか煮沸殺菌したものを使います。また雑菌の繁殖しにくい種まき培土を使うこともできます。

食品保存に使うタッパーのような保湿ができる容器に、殺菌した水苔またはピートモスか予め湿らせた種まき培土を入れます。

シマオオタニワタリの葉裏にできる胞子嚢内の胞子を採集し、用土表面に撒きます。

撒いた後は蓋を閉めて明るい場所で管理します。まず苔のようなものが生え、その後本葉のようなものが出てきたら一株ずつ鉢上げします。

 シマオオタニワタリ/アスプレニウム病害虫

害虫:「ハダニ」「アブラムシ」「カイガラムシ」などが発生することがあります。また虫ではないですが「ナメクジ」による食害もあります。

「ハダニ」は乾燥している状況で、葉裏に発生し、葉裏から吸汁するため葉の色が悪くなります。またハダニはクモの仲間のため大発生すると蜘蛛の巣状の糸を張ります。室内管理や屋根下など株が濡れない場所で育てている場合に発生しやすく、水やりや葉水の際に葉裏から株全体を濡らすだけでも発生を抑えることができます。

「アブラムシ」は新芽や若葉に多く発生します。また極度の日陰や風通しの悪い場所で軟弱な葉が増えると、アブラムシも大発生することがあります。健康的な株作りのためにも環境を整えた方が良いです。

「カイガラムシ」は葉や葉の主軸周辺、新芽などに発生しやすく、風通しや陽当たりが悪い場合に発生しやすくなります。大発生すると葉色が著しく悪くなり、すす病などを併発することがあります。

「ナメクジ」は屋外管理している場合に、株中心部の湿ったところにナメクジが集まることがあり、夕方から活動しつつ葉を食害します。また鉢下や鉢内も湿っているためナメクジがいる場合があり、室内に取り込む前に確認した方が良いです。

「ハダニ」「アブラムシ」「カイガラムシ」の退治には、市販のスプレータイプの薬剤で「花き」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

「ナメクジ」は貝類のため虫用とは別に専用の誘殺剤やスプレー材があるので、それら専用薬剤を使って退治します。

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