ヒペリカム(キンシバイの仲間)の育て方

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の基本情報

科名:オトギリソウ科 Clusiaceae
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属名:オトギリソウ属(ヒペリカム属)
   Hypericum
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学名:Hypericum
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和名:キンシバイ
(金糸梅=Hypericum patulum
和名:セイヨウキンシバイ
(西洋金糸梅=Hypericum calycinum
和名:ビヨウヤナギ
(未央柳・美容柳=Hypericum monogynum
その他低木性ヒペリカムや園芸種など
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原産:ユーラシア大陸の温帯~亜熱帯
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開花時期:6月~7月
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高さ:~1m
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耐暑性:強い
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耐寒性:強い
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ヒペリカム(キンシバイの仲間)の特徴

ヒペリカムは広い意味ではヒペリカム属(Hypericum:オトギリソウ属)の植物を表し、オトギリソウ(弟切草=Hypericum erectum)やキンシバイ(金糸梅=H. patulum)などを含む種類全体を指します。

ヒペリカム属は、ユーラシア大陸の温帯から亜熱帯に自生する植物で、オトギリソウのような草本性の種類からキンシバイやビヨウヤナギ(未央柳・美容柳=H. monogynum)のような低木性の種類まであります。

園芸上「ヒペリカム」と呼ばれる種類は、ヒペリカム属の中でも花や実を観賞する低木性の原種や園芸種を指すことが多いです。

花は鮮やかな黄金色で、開花は6月~7月(暖かい地域では5月中下旬~)に咲きます。

開花後は実を観賞することもあり、コボウズオトギリ(小坊主弟切=H. androsaemum)やその他園芸種が切花として利用されています。

低木性ヒペリカムの多くが樹高は1m前後で丈が低く、株立ち状に枝を伸ばし、枝は湾曲しながら緩やかに枝垂れるため、ボーダー植栽やグランドカバー・庭園の前景などの植栽に使われます。

キンシバイやセイヨウキンシバイなどが植栽に使われてきましたが、近年植栽に多く使われているのは生育旺盛で管理しやすく花や葉が大きく大輪キンシバイとも呼ばれるヒペリカム「ヒドコート」(Hypericum ‘Hidcote’)が使われています。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の管理と置き場所

ヒペリカムは陽当たりから半日陰の環境で、あまり土質を選びませんが、腐植質に富んだ保水・排水性のバランスが良い土壌が良く育ちます。

種類により常緑性や半常緑性などの違いがあり、暖かい地域では落葉しにくいですが、寒い地域では常緑性でも落葉しやすくなります。

低木性とはいえ生育が良く根詰まりすると著しく株の状態が悪化するため、鉢植えできれいな株に育てるためには定期的な土替えを行うか、ある程度株が大きく育った段階で地植えにします。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の年間管理表

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の植え替え

ヒペリカムの植え替えは春(3月~4月)と秋(9月中旬~10月)に行います。暖かい地域であれば厳寒期を除く冬場に植え替えることもできます。

地植え

株の根回りの大きさにより掘る深さや大きさが変わりますが、ポットの苗などの小さな株でも少なくとも直径・深さが30㎝~50㎝は掘り返した方が良いです。

根鉢が20㎝以上ある場合は、根回りの大きさの2~3倍の広さに穴を掘ります。

掘り返した土に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けて下さい。

鉢植え

ポットサイズより2回り大きなサイズの鉢に植え替えます。成長にともない株に対して鉢が小さくなるようであれば、適宜植え替えを行い鉢のサイズを大きくします。

同じ大きさの鉢に植え替える場合は、古い鉢から根鉢を抜き取り、鉢土を1/3~半分落とします。

新しく根が張る場所を作るため、傷んでいる根と共に細根も切って整理し、以前と同じ大きさの新しい鉢に植え替えます。

根を大量に切る場合は株のダメージを軽減するため、枝の剪定も同時に行います。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の用土の選び方

ヒペリカムは土質をあまり選びませんが、保水・排水のバランスが良い用土で植え替えると健康的に育ちます。

鉢植え

市販の樹木用の培養土や観葉植物用の培養土で植え替えできます。

また市販の花や野菜用の培養土でも育ちますが、植え付け初期は土の過湿ぎみになるものもあるため、排水の良いものを選ぶと良いです。

混合して作る場合は赤玉土小粒:腐葉土=7:3の土に植え替えます。

地植え

植えこむ周囲の土量に対して完熟堆肥を2~3割と完熟肥料を混ぜて植え付けます。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の水やり

ヒペリカムの水やりは一般的な樹木の水の与え方に準じます。

鉢植えの場合は基本的に鉢の表面が乾いたら鉢下から水が出てくるまでたっぷりと与えます。

庭植えの場合は、植えた直後にたっぷりと水を与えた後は、梅雨前までは晴天が続く場合のみ水を与えます。

一度根を張ると夏までは水やりをしなくても元気に育ちます。一方で夏場は晴天の日の夕方あたりにたっぷりと水を与えてください。

二年目以降は夏で晴天が続くような場合を除けば、基本的に天候任せで大丈夫です。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の肥料の与え方
地植え

植え付け前に土質改良のための堆肥類とともに完熟有機肥料を元肥として根回りに与えます。

もし完熟まで至っていない(発酵や未発酵の)有機肥料や堆肥の場合は、根や根鉢に直接当たらないように混ぜます。

定植後の株には追肥として、生育が始まる3月と暑さが落ち着く9月中旬~10月上旬に有機肥料か緩効性の化成肥料を株元から離した株回りに与えます。

鉢植え

根を傷めないような緩効性の化成肥料か完熟の有機肥料を土に混ぜ込んで植え付けます。

地植えの場合と同じく生育が始まる3月と暑さが落ち着く9月中旬~10月上旬に有機肥料か緩効性の化成肥料を株元から離した株回りに与えます。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の剪定

ヒペリカムは春から成長した枝に花芽を付けて5月~6月に開花します。そのため剪定は猛暑期と厳冬期を除き3月までに行います。

樹高を低く抑えたい場合は地際から20~30㎝前後で剪定し、樹高を高めに育てたい場合は整える程度に全体を軽く刈り込みます。

一方でヒペリカムは地際から新しい枝が芽吹くのでグランドカバーのように低く茂らせる場合は、新芽を切らないように地際から刈り込みます。

3月までに剪定すれば良いので、夏に茂りすぎた場合は8月末~9月に剪定することもできます。ただし気温が高いため葉が残らないような刈り込みは避け、伸びすぎた枝などを整える程度にします。

また気温が下がって生育が止まり剪定後の樹形が春まで続くこともありえるため、晩夏から初秋の剪定は樹形を意識して剪定します。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の増やし方

ヒペリカムは「挿し木」「株分け」で増やすことができます。

挿し木

挿し木の時期は5月~6月に行います。

新梢で固く充実したものを10㎝前後で切り、葉が2~3枚残し挿し穂下側の葉を取り除きます。

挿し穂下端を良く切れるナイフやハサミで斜めに切り直して水につけて給水させ、湿らせた赤玉土の小粒や鹿沼土の小粒など清潔な土に挿し穂を挿します。また挿し穂に発根剤を使うことで発根率が上がります。

発根するまで日陰に置き、水を与えながら管理します。

株分け

植え替え時期と同じく3月~4月・9月中旬~10月に行います。

ヒペリカムの株は根元から幾本もの枝が伸びあがる株立ちになっています。

掘り上げた株や根鉢を地際の枝数本ごとを1株として、株を縦に割るように切り分けます。切り分ける際はスコップやハサミなどで株分けします。

ヒペリカム(キンシバイの仲間)の病害虫

病害虫に強い樹木ですが環境次第では、害虫として「アブラムシ」「カイガラムシ」「ハダニ」、病気として「うどんこ病」などの病害虫が発生することがあります。

害虫

「アブラムシ」
蕾や新芽などに発生します。極度の日陰や風通しが悪い場所で大発生しやすいため、茂りすぎた場合にも発生しやすくなります。

剪定などで発生しにくい環境作りも重要になります。特に病害虫に強いので、環境改善だけでも病害虫の発生を抑えることができます。

「カイガラムシ」
枝や葉の付け根に発生します。アブラムシ同様に極度の日陰や風通しが悪い場所で発生しやすくなります。

陽当たりの良い場所に植えなおしたり、剪定して風通しを良くすることで発生を抑えることができます。

「ハダニ」
葉裏から発生し、吸汁するため葉色がかすれた様な色合いに変色し、大発生すると蜘蛛の巣状の糸をはります。

水が苦手なので露地ではあまり発生しませんが、マンションなどの外周に見られるような軒下の花壇に植栽している場合に発生します。

定期的に散水するか消毒により防除できます。

病気

「うどんこ病」
カビによる病気で葉面に白い粉をまぶしたような病変が表れます。特に害虫類と同じく極度の日陰や風通しの悪い場所で発生しやすくなります。

退治・治療方法

上記病害虫が発生し消毒で対策する場合は、市販の薬剤またはスプレー剤で「樹木」の登録と対象病害虫の記載があるものを使っていけば退治できます。

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